【12月13日 AFP】手こぎボートで太平洋の単独横断を目指していたイタリア人冒険家が13日、10か月におよぶ1万8000キロの旅のゴール直前で悪天候のため救助された。

 アレックス・ベリーニ(Alex Bellini)さん(30)は、2月21日にペルーのリマ(Lima)を出発した。13日にオーストラリアに到着し、史上5人目の太平洋単独横断を成し遂げるはずだった。

 しかし到着予定日前日の12日、オーストラリア東岸付近を激しい嵐が襲った。ベリーニさんの妻、フランチェスカ(Francesca)さんは、自分の夫が陸から65カイリ(約120キロ)のところで救助を必要としていると通報。ベリーニさんのボートからわずか12カイリ(約22キロ)のところにいたニュージーランド船籍のタグボートが救助を要請され、13日早朝にベリーニさんのボートをえい航してオーストラリアのニューカッスル(Newcastle)に到着した。

 ベリーニさんは、あと一歩のところで今回の冒険を成し遂げられなかったことを「特殊な出来事」と表現。「残念だとは思っていません。がっかりなんて全然していませんよ。自力で陸に到達することはできませんでしたが、(太平洋を)渡ることはできたんだから。ケーキの上にサクランボを載せることはできなかったけれども、ケーキ自体はとても大きくて美味しかった。決して忘れることはありません」と満足気に語った。ベリーニさんは、単独の手こぎボートでは最長となる295日間の冒険を達成したことになる。

 やつれて疲れた表情を見せたベリーニさんは、ゴール直前で救助されたことついて、英衛星放送のスカイニューズ・テレビ(Sky News)に対し、「ゴールまで残りわずかでしたが、その晩の天気は非常に荒れると予報されていました。それで私のチームの支援を受けて、陸までのえい航を要請することにしたんです」と語った。

 ベリーニさんはこれまでにも、地中海と大西洋の手こぎボートでの横断、モロッコの砂漠250キロを走破、アラスカ(Alaska)で1400キロのそり引きなどを達成してきた。今回の冒険で体重は15キロも減り足はふらついていたが、健康状態は良好だという。

 全長7.5メートルのボートで10か月間1人で過ごしてきたベリーニさんは、ニューカッスルで到着を待っている妻のフランチェスカさんとの再会について、「人生最高の瞬間のひとつ、結婚式の日のようです」と語った。(c)AFP/Torsten Blackwood