【12月4日 AFP】コンゴ民主共和国(旧ザイール)にボランティアとして赴いている英国人外科医が、本国の同僚からテキストメッセージで指示を仰ぎながら困難な腕の切断手術を行い、現地の少年の命を救った経験談を語った。3日、英BBCラジオのインタビューに医師が答えた。

 10月、コンゴで勤務しているデビッド・ノット(David Nott)医師のもとに、漁の最中にカバに襲われて左腕をかみ切られたという16歳の少年が運ばれてきた。左の肩甲骨から肩甲帯を切断する手術が必要だと判断したが、ノット医師には経験のない手術だった。集中治療室(ICU)でリスクの高い大規模な手術を行う必要があったが、現地の手術用設備はごく簡単なものだけで、輸血用血液も600ミリリットル程度しかなかった。

 そこでノット医師は、ロンドンにいる同僚で、似た状況下での手術の経験がある数少ない英国人医師の一人、メイリオン・トーマス(Meirion Thomas)教授にメールで連絡し、返信されてくるテキストメッセージの指示を頼りに手術を行った。

 手術中「少年を片腕だけにしてしまうのは正しい判断なのか」と自分に問い直すこともあったが、切断しなければ少年の命は助からないと心を決め、深呼吸をしてから指示を実行していったという。その後2か月、少年は完全に回復したという。

 トーマス教授とは「一緒に手術したことが何回もあったから、彼の言うことはすぐにのみ込めた。わたしがあの現場にいて、手術できたのは、幸運と言うほかない。わたしは誰かの命を救えることに喜びを感じている。だから、ボランティア活動にもよく参加するんです」

 ノット医師は、コンゴの政府軍と反政府勢力の戦闘が激化している東部の北キブ(Nord-Kivu)州ルチュル(Rutshuru)に「国境なき医師団(Medecins Sans FrontieresMSF)」のボランティア医師として滞在している。(c)AFP