【11月5日 AFP】1990-91年の湾岸戦争時に海外に逃れたイラク人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいるが、国にとどまったイラク人はPTSDを経験していない。こうした調査結果が、3日の医学誌「New Iraqi Journal of Medicine」に発表された。

 調査は、湾岸戦争から10年が経過した2001年に、米国およびイラク在住のイラク人男性1100人以上を対象に行われた。湾岸戦争に参加した兵士が742人、一般市民が413人という内訳だ。

 調査を行ったスウェーデンのウプサラ大学(Uppsala University)、米ウェイン州立大学(Wayne State University)、バグダッド大学(University of Baghdad)によると、米国に逃れたイラク人男性でPTSD発症率が高いのに対し、イラクに残った兵士や一般市民はどちらにもPTSDの兆候が現れていなかった。

 調査に参加したウプサラ大学のBengt Arnetz教授は、米国に逃れた方がPTSDが多い理由について、「戦争中の国から逃れると、生き残ることだけに集中してきた心の中に、これまでの辛い経験を振り返る余裕が生まれる。その上、生活をゼロからスタートさせなければならなくなる」と分析する。

 また、イラク残留組については、「緊張を強いられる生活が続いているためにPTSDを発症しないのではないか」と考えている。

 調査では、イラク残留組のうち、一般市民よりも、戦争に参加した兵士の方で、うつ病になる確率が高いという結果も出た。 

 以前の調査では、湾岸戦争に参加した多国籍軍兵士の26-32%が、記憶障害、慢性疲労、不眠症、筋肉痛、呼吸困難といった慢性的な健康障害に苦しんでいることが明らかになっている。(c)AFP