【11月3日 AFP】米国西海岸からタイまで、世界各地の豪華リゾート地では、体内から有毒物質を排出する「デトックス」効果をうたった断食コースが健康志向の観光客の間で大人気だ。一方で、断食による健康面でのデトックス効果を疑問視する声もあがっている。
 
 イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」、ユダヤ教の「ヨム・キプール(大贖罪日、Yom Kippur)」など、宗教による断食は古くから行われてきた。こうした宗教探求的な修行の一環としての断食行為には一理あるというのが、栄養学専門家のジャンクロード・メルシオール(Jean-Claude Melchior)さんの意見だ。だが、営利目的で絶食を強いる現代の「断食デトックス」ブームには、倫理面から疑問を投げかけている。

 欧州で流行している低下価格の断食コースは、水以外は何も口にしない完全絶食ではなく、フルーツジュースや野菜スープのみを摂取するものが多い。こうした断食には医師の管理が不要なため、営業的に提供が容易という事情もある。だが、1日の食事が野菜スープ一杯や水で薄めたフルーツジュースだけでは、必要な栄養摂取量をとうてい満たすことはできない。こんな方法が、果たして本当に健康的と言えるのだろうか?

「断食には多くの良い効果がある」と、宿泊が必要なタラソテラピー・コースにとって代わる日帰り「自己改造」コースを提供するエイドリアン・レイゲイド(Adrien Reygade)さんは主張する。レイゲイドさんを始め、多くの断食セラピーのエキスパートが語る断食効果のキーワードは「デトックス(解毒作用)」だ。

 だがメルシオールさんは、こうした主張には懐疑的だ。断食のデトックス効果は証明されていないうえ、栄養摂取の調節機能のバランスを乱しかねないなど、むしろ有害である可能性が高いと指摘する。

 現在、欧州では断食と並行してトレッキング(山歩き)を行うプログラムが流行中だが、これについてもメルシオールさんは低血糖を発症する恐れが高いと警鐘を鳴らす。12時間近く絶食した場合、肝臓内のグリコーゲン(体内に蓄えられた糖質)を消費し尽くし、血液中の糖分濃度が著しく低下する。これにより、低血糖の危険を察知した筋肉や脳などの臓器は必死に糖分を取り入れようとするため急激に血糖値が上昇してしまう。

 しかし、「トレッキングにはデトックス効果があるし、危険もない。軍隊での訓練とは違う」と、フランスで「断食とトレッキング・プログラム」を提供する自然療法士のダニエル・カザール(Daniele Cazal)さんは反論する。「トレッキングでは、例えば、美しい郊外の景色を楽しむことなどで、食べ物に頼らずに空腹を満たすことができる」

 一方、フランスでの「断食ブーム」仕掛け人の一人、デジレ・メリアン(Desire Merien)さんは、「どこにも過激な自然健康法に走る人間はいるものだ」と述べ、こうしたプログラムの提供者は、断食が行き過ぎないよう配慮する必要があるとの意見だ。
 
 いずれにしても、断食コースは日常生活における不摂生の改善にはならないという点では、栄養学者も自然療法士も一致している。(c)AFP/Veronique Martinache