【10月15日 AFP】米国に端を発した金融危機の影響で経営危機に陥った英国の葬儀屋が、葬式の手配を拒否するという事態が相次いでいると、大衆日曜紙「メール・オン・サンデー(Mail on Sunday)」が報じている。

 葬儀屋の多くが信用収縮の影響で葬儀費用を前もって用立てできなくなったため、葬儀費用を前払いできない顧客には、葬儀を断っているという。

 英国では、国の社会手当給付を受けている場合、葬儀費用が用立てできない事実を証明できれば、遺族は雇用年金局から葬儀手当を受け取ることができる。年間2万7000人あまりが、こうした手当てを受けており、その総額は4600万ポンド(約83億円)に上る。

 しかし、葬儀手当ての給付には時間がかかるため、葬儀を2か月以上も延期しなければならない事態も起きているという。 

 英国の葬儀社業界団体「National Society of Allied and Independent Funeral Directors」のジョン・ウィアー(John Weir)氏は、何百人もの同業者が、銀行から葬儀費用の信用貸しが受けられないという「前代未聞」の状況に陥っていると語る。

 ウィアー氏は、こうした金融不安の状況下では、葬儀屋も商業主義を重視し、顧客に前払いを求めざるをえないと「メール・オン・サンデー」紙に語っている。また、死亡から埋葬までの期間は通常、10日間だが、政府の葬儀給付金支給までの期間が長期化しており、遺族らは現在、葬儀まで5週間かそれ以上待たされる状況だという。

 野党・保守党のDaniel Kawczynski議員は「金融不安による信用収縮の影響で、多忙な葬儀屋たちは、慣習に反し前払いの顧客以外の葬儀を請け負わなくなっている」と説明する。

 Kawczynski議員の選挙区、シュルーズベリー(Shrewsbury)では、8月13日に死亡した77歳の男性が、いまだに埋葬されずにいる。遺族が申請した政府給付金が今月9日になっておりたため、ようやく葬儀が17日に行われる運びとなった。

 こうした事態について地元選挙区自治体からの苦情を受け、保守党は、同問題に対する与党の見解を議会で問いただす考えだ。(c)AFP