【9月3日 AFP】ドイツ南部のバイエルン(Bavaria)州にあるバートキッシンゲン・ホテル(Bad Kissingen Hotel)にようこそ。ここにはルームサービスもベッドもなく、インターネットも使えない。そもそも、一般的な概念での「部屋」がない。

 このホテルでは、わらのベッドにもぐりこんで寝る。夜空の下で寝るために「1000星ホテル」とも呼ばれているが、雨よけのための小さな天幕はつけられている。しかしそれでも、満点の星空と日の出を堪能するには充分だ。

 ホテルを考案したのは、モニカ・フリッツ(Monika Fritz)さん(40)。1970年代にヒットしたユルゲン・ドリュウズ(Juergen Drews)の「Ein Bett im Kornfeld(トウモロコシ畑の中のベッド)」をラジオで聴いた時にヒントを得たという。「お客さんは、日常を逃れて自然に近づくために、ここにやってきます」とフリッツさん。

 地元農民や町議会議員らと協力して作り上げたホテルは、今年で7年目に入る。1泊7ユーロ(約1100円)で、朝食付きは8ユーロが追加される。営業は、8月中の2週間だけだ。

 客は、サーカステントの受付で手続きを済ませたあと、小麦畑の中に迷路のように点在する19ある「部屋」の1つに案内される。部屋と部屋の間には小麦とライ麦を4、5メートル積み上げた仕切りがあるのみで、プライバシーはほとんどない。だが、取材した日に宿泊していた30人ほどの客は、隣の物音も、いびきも、そして寝袋を通してチクチクするわらも、全く気にならない様子だった。

 ある22歳の女子学生は、「快適で、魔法にかかったような気分だった。千と一個の星を見ることができたわ」と興奮気味に話した。(c)AFP