【8月20日 AFP】ナイジェリアのバカシ半島(Bakassi)に住むサンデー・ビナン(Sunday Binang)さん(52)は、先祖代々の土地を失ったと悲嘆にくれている。「わたしと3人の妻、17人の子どもは、自分の国にいながら難民になってしまった」

 石油と漁業資源が豊富な面積1000平方キロのバカシ半島は、15年間にわたり隣国カメルーンとの間でその帰属が争われてきた。カメルーンは1994年、ナイジェリアとの国境線の確定を求めて国際司法裁判所に提訴。同裁判所は2002年10月にバカシ半島がカメルーンに帰属するとの見解を示し、ナイジェリア軍は2年前に同半島からの撤退を開始した。そして両国は14日、国連関係者の同席のもと、カメルーンへの割譲に調印した。

 これに伴い、2万人の住民は、カメルーン領となった同半島に残るか、ナイジェリアに移動するかのいずれかを選択しなければならなくなった。ビナンさんは後者を選んだ。現在は、故郷を失った人々を一時的に収容するセンターに暮らしている。「配給される食糧で食いつないでいる。まるで囚人だ」と憤るビナンさん。

 ナイジェリア政府は、バカシに近いイカン(Ikan)に205戸の住宅を建設することを約束しているが、バカシ半島で漁師をやっていたという男性は、バカシに残してきた先祖の墓をどうすればいいのかが心配だ。
 
 この男性は、「バカシへ行くにはビザが必要になった。バカシで漁をするときには税金を払わなければならなくなった」と嘆いた。

 別の男性は、割譲を「無視という名の犯罪、不正かつ無神経」と非難した。「われわれの唯一の生計である漁業が、外交の名のもとに奪われてしまった」(c)AFP/Joel Olatunde Agoi