【8月5日 AFP】原油価格の高騰が続くなか、米国では「財布の中身だけでなくウエストもスリムなった」など、エネルギー価格の上昇がもたらす利点にも目を向けようとの試みが関心を集めている。

 ノースカロライナ大学(University of North Carolina)で経済学を教えるチャールズ・コートマンシェ(Charles Courtemanche)教授は、1984年から20年間、米国の数州におけるガソリン価格と肥満との関係を調査してきた。その結果、ガソリン価格が1ドル上昇すると、体重超過の割合が7%、肥満は9%減少することが分かったという。

 その仕組みは、「ガソリン価格が上がれば、人びとは車でなく公共機関を利用したり、自転車、徒歩で移動することが増える」ということらしい。また、「車に乗って出かけなければならないレストランでの外食を控え、健康的な家庭の食事を採るようになる。さらに収入の減少で、食べる量も少なくなる」ことも、結果的に健康に役立っていると、コートマンシェ教授は説明する。

■安全運転や雇用創出にも貢献

 一方、米安全性評議会(National Safety Council)の調べによると、ガソリン価格の高騰は安全運転にも貢献しているようだ。

 ガソリン代節約のため、運転速度を落とすドライバーが増えた上、走行距離も以前より短くなり、その結果、交通事故による死亡率が減少しているという。

 さらに環境や経済面でも、自動車業界には燃費効率の高い車両の開発が求められ、これに伴い数千単位の雇用が創出されるなどの効果が期待できるそうだ。

 米科学者団体「憂慮する科学者連盟(Union of Concerned ScientistsUCS)」は、「2020年までに最低燃費35mpgを達成できれば、1日110万バレルのガソリンを節約し、全米で14万9000の雇用が創出できる」と期待を示す。

 さらに、ガソリン代を節約することで、多くの米国人がこれまでガソリン代として支払っていた家計費を地元銀行に預金に回し、地元経済が活気づくという。

■恋愛にも効果的?

 健康や経済効果ほど明らかではないが、原油価格の高騰は恋愛関係でも効果的との意見もある。

 米西部コロラド(Colorado)州在住のジェリ・クレーブンス(Jeri Cravens)さんは、東部メリーランド(Maryland)州に住むボーイフレンドと1年におよぶ遠距離恋愛中だ。

 原油価格が高騰する以前、クレーブンスさんはメリーランドにいるボーイフレンドのもとを数日間、訪れることを繰り返していた。だが、今では格安航空券でさえ200ドル(約2万円)から500ドル(約5万5000円)と急騰したため、クレーブンスさんは、メリーランド訪問の回数を減らす代わりに、滞在日数を増やすことにしたという。

「彼に会う回数は減ったけど、長い期間をともに過ごすことで真のカップルという意識が芽生えた」(クレーブンスさん)

 短期滞在のころは、デートを繰り返していただけだったというクレーブンスさんは、「ガソリン価格が高騰していなければ、2人の関係は今でも『単なるボーイフレンドとガールフレンド』のままだったかもしれない」という。

 来月には、ボーイフレンドがクレーブンスさんのもとを訪れ、10日間程度滞在する。(c)AFP/Karin Zeitvogel