【7月24日 AFP】北京五輪の開催をきっかけに、ここ2年ほどで北京には次々と欧米の高級レストランが進出したが、北京ダックの本場で生き残るのはなかなか難しいようだ。

 富裕層が常連客になる見込みはあるものの、店内が満席になることは少ない。「どこの店も同じだよ」と話すのは、フレンチレストラン「Jaan」のシェフ、ギヨーム・ギャリオ(Guillaume Galliot)氏だ。「ここは上海(Shanghai)でもシンガポールでもない。北京の人たちにはまだ早かった」。

 同氏は、五輪開催の勢いで北京に出店した多くの高級レストランは、五輪が終われば2年ほどで撤退すると予測している。「北京の人々は金を持っている。それでも彼らは、同じ金額を払うなら高級中華料理を選ぶんだ」。

 一方、別のフレンチレストラン「Le Pre Lenotre」のシェフ、フレドリック・メナール(Frederic Meynard)氏は、比較的楽観視している。最近、平日でも座席の3分の2は埋まり、その大半が中国人で、常連客もできたからだ。「北京にはたくさん可能性がある。多数の高級レストランが進出する余地がある」と主張する。

■異なる作法に当惑する客

 ただし、メナール氏は、フランス料理の儀式的なテーブルマナーが、中国人の客を当惑させる原因となっていることも認めた。

 中華料理では、料理は素早く、いちどきに出されることが多い。中央のターンテーブルに置かれ、人々は気軽に取り分ける。

 これに対し、フランス料理では、個々に料理が出される。複雑な皿の配置やディッシュカバー、パンや輸入食品、一度にすべての皿を下げるなど、すべてが中国人の食事作法と異なる。

■郷に入っては郷に従え、中国式にアレンジ

 これに対し、ニューヨーク料理界の重鎮で高級フランス料理店のオーナーシェフ、ダニエル・ブールー(Daniel Boulud)氏は、中国の食習慣をテーブルマナーに取り入れる姿勢を示している。

 同氏がこのたび天安門広場(Tianamen Square)近くにオープンした新しいレストラン「メゾン・ブールー(Maison Boulud)」では、客の要望があれば中国式にアレンジしてフランス料理を提供するという。メゾン・ブールーの支配人は、米国のレストランと同様に、気取る必要はなく、「ケチャップやタバスコが必要ならばすぐにお出しする」と述べた。

■欧米レストランは「高慢」か

 それでも、北京のナイトライフに詳しいカナダ人ブロガーのジム・ボイス(Jim Boyce)氏に言わせれば、新しくオープンした高級レストランは、五輪開催期間ですら生き残れないだろうとのこと。特に上海やニューヨーク、ロンドン(London)などのコンセプトを持ち込んだ店は、北京を理解していないと同氏は主張する。

「彼らは地元の人々が好まないコンセプトを持ち込み、うまくいかないと『北京にはまだ早かった』と言う」(ボイス氏)
 
 同氏は、北京には洗練された料理があり、人々は洗練された食事をしていることを理解するべきだと述べ、中国人に食事について教育しようとする欧米レストランの「高慢さ」を批判している。

 一方で、ガイドブック「Time Out」北京版などは、「たった5年前には、北京で高級料理店といえば値段の高い点心くらいしかなかった」と述べ、新しいレストランがオープンしたことで選択肢が広がったと歓迎している。(c)AFP/Gersende Rambour