【7月8日 AFP】エジプト・カイロ(Cairo)中心部のGamal Abdel Nasser高校では、数十人の母親が自分の子どもが「サナウィーヤ・アンマ」を受け終わるのを待っている。高校3年間で2回行われる全国統一の期末試験であるサナウィーヤ・アンマは、その成績で大学が決まってしまうため、子どもたちの将来に大きく影響する試験だ。

 国民の約20%が貧困ライン以下の生活をしているといわれるエジプトでは、堅固な階級の壁を突き破るために大学教育、特に薬学や工学の学位を持つことが必要だ。サナウィーヤ・アンマを受験する学生のほとんどが中間所得層か低所得層出身者。富裕層は、英国やフランス、ドイツなどへの海外留学という選択肢があるからだ。

 しかし、サナウィーヤ・アンマ受験に向けた親の負担は大きい。崩壊しかかっている公教育の穴を埋めるため、ただでさえ少ない所得の大半を家庭教師などに費やさなければいけないからだ。そうまでしても親や子は、自分たちが望む「社会的流動性」のため、この試験にかけている。

 一方、このサナウィーヤ・アンマをめぐっては、今年に入ってから2人の学生が自殺している。また、親たちも子どもを助けるためにさまざまな不正行為を行っている。教室の窓の外で答えを叫んだり、携帯電話のメールを使ったカンニング、頭に着けたイスラム教のスカーフにカンニングペーパーを仕込むことさえあるという。

 試験が終わり、教室を出てきた生徒は叫び声を上げたり、涙を見せたり悲喜こもごもの反応をみせる。もちろん、これは母親らも同様だ。

 娘を待っていたSoad Ahmed Hassanさんは、ナイルデルタ(Nile Delta)地方の出身で、17歳で結婚したという。子どもにはより良い教育を受けさせたいと考え、経済的な事情を考慮して、地方の慣習を破る2人の子どもしか産まなかった。

 しかし、Soadさんは娘から試験で上手くいかなかったことを聞き「こんなことになるのがわかっていたら、もっとたくさん子どもを産み田舎で暮らして、娘は嫁がしてやるんだった」とこぼした。(c)AFP/Jailan Zayan