【6月25日 AFP】スーダン西部のダルフール(Darfur)地方の最大都市にして交易の中心地、ニャラ(Nyala)。ここには、5年目に突入した紛争にもめげない商売人たちが集まる。街に1つの映画館は、ささやかな娯楽を提供し続ける。

 援助団体のある職員は、この街を「ダルフールのマンハッタン」と呼ぶ。ダルフール地方の人口の60%がこの街とその近郊に集中しているためだ。 
 
 ニャラは同地方で最もインフラが整備され、スーダンでも有数の経済都市。ビジネスだけでなく文化の中心地でもある。一方で、ニャラを含むスーダン南部は反政府組織の本拠地でもある。

 同市の当局者は、「ダルフールに平和が戻ったら、この街は重要な都市になる。世界中の人がこのパラダイスに惹かれ、投資したいと思うようになるだろう」と語る。

 エジプト人のマフルスさん(28)は、紅海のリゾート地シャルムエルシェイク(Sharm el-Sheikh)のレストランを辞めて、ニャラにチェーンレストラン「Beatles」の支店を新たに開いた。ピザ、ファーストフード・スタイルのサンドイッチ、魚・肉料理を提供する。レストランのもうけは1か月に7000から1万ドル(約75万から100万円)。ホッサンさんの月給は1000ドル(約10万円)だ。エジプトで近々挙げる結婚式の費用に充てる。
 
 チェーンレストラン会社は、もう1店舗作る予定だという。国際援助団体の職員たちが集まるこの街では、もうけも大きいのだ。

 営業は朝から深夜まで。従業員は全員エジプト人。マフルスさんは、スーダン人は怠け者、のイメージを元にした次のジョークを教えてくれた。「エジプト人がスーダン人に、よく眠るための秘訣を聞いた。するとスーダン人は答えた。『起きた時から休憩するんだ』」 

 タヒールさんは、屋外映画館を経営している。彼いわく、ダルフール唯一の映画館だという。壁には、胸の谷間が強調された女性やアクション、アドベンチャーヒーローのポスターが並ぶ。ボリウッド映画が特に人気だという。「貧しいやつが金持ちをやっつけるからね」

 だが、客足は鈍りつつある。特に夜間は、ニャラまでの移動は危険が伴う。テレビやDVDといった新しいものも、映画館から足を遠のかせる。

 教師で詩人、「アガサ・クリスティー(Agatha Christie)が大好き」と言うムスタファさんは、大の映画好きだ。「紛争が始まった当初は(映画館へ行くのが)こわかった。でも映画は、市民としての意識を高めてくれるし、力もドラマも与えてくれる」

 ニャラに限らず、ダルフール全域で、また難民キャンプで、即席の露店が多く見受けられる。ニャラ郊外の砂漠にある難民キャンプでは、アイシャさん(30)が喫茶店を開いている。紅茶3杯が1ポンド。援助物資の植物油が入っていた缶をハンマーで延ばして作った小さなコーヒーテーブルに、客をいざなう。1日10-15ポンドの稼ぎだ。(c)AFP