【5月30日 AFP】ドイツ・ベルリン(Berlin)に7月に開館するマダム・タッソー(Madame Tussauds)ろう人形館に、ドイツ史で最も悪名高い人物――アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)――の人形が並ぶ。同館の広報担当者が30日明らかにした。

 来館者に「偉人」と勘違いされないよう、第2次世界大戦末期、最期の数日間を恋人と共に過ごしたとされる地下壕(ごう)で「打ちひしがれる」姿を模した人形になるという。また、来館者がヒトラー人形と並んで写真撮影できないよう、テーブルの向こうに腰掛けるポーズになる予定だ。
 
 広報担当者によれば、事前にベルリン市民や観光客にアンケートをとり、ヒトラー人形を見たいとの意見が多かったことから展示が決定した。「ドイツ史を描くにあたって、ヒトラーを除外するわけにはいきません。ありのままの現実を展示したいと思ったのです」

 ドイツ・ユダヤ人中央評議会(Central Council of Jews)のスティーブン・クレーマー(Stephen Kramer)氏はヒトラー人形の展示について、ホロコースト(Holocaust)を生き延びた人々に不快感を与えるだろうとしながらも、適切な展示方法ならば反対はしないと語った。

「観光の目玉のように扱われるのは望ましくない。だが現在、ヒトラーはある意味、神話的に扱われており、これを正す上で多少なりとも役立つのなら、やってみてもいいと思う。歴史からヒトラーを消したところで、亡くなった人々が帰ってくるわけではない。彼の与えた痛みが癒えるわけでも、彼の犯した罪がなくなるわけでもない。彼を歴史から消そうとするのは、むしろ非生産的な態度と言えるだろう」(クレーマー氏)

 一方、ベルリン市議会の広報担当者によると、クラウス・ボーベライト(Klaus Wowereit)市長はヒトラー人形の展示について懸念を示しているという。市長は29日にも、ロンドン(London)のマダム・タッソー蝋人形館に質問状を送付。ドイツ側の国民感情に言及し、「どのようなかたちで人形を展示するのか、どのようにこちらの懸念に配慮するのか」回答を求めているという。(c)AFP