【5月12日 AFP】多くの大学が学生に利用を禁じてきたオンライン百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」が今、教材として教授らに注目され始めている。

 学期末レポートの代わりに、無料オンライン百科事典ウィキペディアの記事の執筆を課題にする大学教授が増えてきているという。

 ウィキペディアとは、「オープンソース」型のウェブサイトで、インターネットに接続さえしていれば誰でも執筆や編集を行うことができるオンラインの百科事典。しかし、「大半があまり良い記事とは言えない」というのが教育関係者らの意見だった。

 ウィキペディアの学術的な水準を高めるため、ウィキペディアの英語サイトは記事に評価尺度を導入した。最も評価の高い記事は、「Featured Article(秀逸な記事の意)」とランク付けされ、ウェブサイト(www.wikipedia.com)に毎日掲載される。

「秀逸」な評価を獲得するには、記事の「内容が詳細で、文章がよく練られており、多数の査読論文への参照によって裏付けされていること」が求められる。

 ウィキペディアによると、253言語で執筆された総数1000万件以上の記事の中で、「Featured Article」の評価を受けたものは約2000件ほどに過ぎない。

 カナダ西部にあるブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)でラテンアメリカ文学を教えるJon Beasley-Murray教授は1月、試験運用として、「殺人、狂気、暴力」と題された講座で、受講生らに対してウィキペディアで「Featured Article」の評価を獲得した場合には、希少なA+の成績を与えると約束した。

 5月には、受講生9人が執筆した3つの記事が、学生の執筆記事としては初めて、ウィキペディアの最高ランクの評価を獲得した。

 同教授の生徒で、グアテマラ人のノーベル賞受賞作家Miguel Angel Asturias氏についての記事を執筆したMonica Freudenreichさんは、ウィキペディアへの寄稿について、オンライン上に残り続けることが気に入っているという。学期末レポートはたいていの場合、「バインダーに入れて、ベッドの下にしまい込んで終わりになってしまうから」と、Monicaさんはウィキペディアに記した。

 現在ウィキペディアには、ブリティッシュコロンビア大学の学生らのほかに、エール大学(Yale University)やエストニアのTartu大学(University of Tartu)のプロジェクトなど、70の学生プロジェクトが登録されている。(c)AFP/Deborah Jones