【5月9日 AFP】ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)仏大統領との結婚から3か月。カーラ・ブルーニ(Carla Bruni)さんは元スーパーモデルから仏大統領夫人へと、見事な変貌を遂げている。ハイヒールを脱ぎ、控えめな上品さを醸し出す新しいドレスをまとい、一夫多妻制について語らなくなった。

 サルコジ大統領は任期1年目終了を目前にして支持率が低迷しているが、新大統領夫人となったカーラさんは国民の間で人気上昇中だ。

■夫のサルコジ大統領にファッション指導も

 最近、サルコジ大統領のファッションが変化したのは、ブルーニさんの「コーチ指導」によるものとみる人もいる。大統領のファッションが、彼の好みである派手さを抑えたものにした結果、激しやすい性格の人物から、政治家らしく見えるようになったというのだ。

「夫人が大統領にもたらした影響を計るには早急すぎるが、強い影響を与えたことに疑いはない。夫人のおかげで大統領に安定感が感じられる」と、パリ政治学院(Sciences Po)の政治評論家Philippe Braud氏は指摘している。

 カーラさんがサルコジ大統領をなだめて、今まで物笑いの種になっていた豪華な腕時計や飛行士のようなサングラスをやめさせ、きちんとした仕立のスーツと優雅なシャツを着るよう指示しているのではないかという声も上がっている。

 カーラさんはポップカルチャーを好む大統領に、パリ(Paris)のコメディ・フランセーズ(Comedie Francaise)の知的な演劇を見ようと説得したともいわれている。コメディ・フランセーズへ観劇に出かけた夫妻は、明かりが落ちた後に席に着き、カーテンコールの前に劇場を出ている。

■「ミスを犯さず点数を稼いでいる」カーラさんの評価高まる

 サルコジ大統領の支持率は現在32%まで低下している。国内経済の低迷と、前妻セシリア(Cecilia)さんとの離婚からわずか3か月後に現在の夫人とのロマンスが急展開し、結婚に至ったことが原因とされてきた。

 ところがカーラさんは、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)へのあいさつからチュニジアの孤児院の訪問まで、初の海外公式訪問を見事に演出。その後、フランスの評論家たちは称賛の意味を込めて「カーラ効果」という言葉を口にし始めた。

「カーラさんはこの数か月間、点数を稼いでいる。英国公式訪問がターニングポイントだった。彼女はミスを犯していない」とBraud氏は語る。

 仏誌「Gala」は、「サルコジ大統領のアドバイザーは、荒れた大統領をより冷静で上品にするためにカーラさんに意見を求めている」と報じている。Braud氏は、「カーラさんは大統領にマナーも教えていると思う」と語った。
 
 2007年の大統領選では、サルコジ大統領のライバルである左派候補を公に支持していたカーラさんだが、現在では両派の国民から支持を得ている。市民アンケートでは両派ともに10人中9人がカーラさんを「優雅」で「モダン」だと評価したのだ。

 大統領自身もカーラさんの美しさ、文化、5か国語を話せるという知性に敬服しているようで、公にカーラさんを褒めることもしばしばだ。

 そして、週刊紙カナール・アンシェネ(Canard Enchaine)に掲載されるジョーク記事「Diary of Carla B」を例外として、仏メディアはカーラさんを好意的に評価している。

■「カーラ効果」でも低下の支持率挽回は困難?

 しかし、カーラさんの人気が大統領に良い影響を及ぼす予兆はみられない。フランス経済の低迷が続き国民が安心を求めているときに短期間で離婚と再婚。さらに農業見本市で男性をののしる事件が起きたことから、専門家らは「大統領が気まぐれで不安定な人物に見えている」と指摘している。

 政治評論家のJean-Luc Parodi氏は、世界経済の危機と改革の不人気のおかげで、サルコジ大統領の支持率低迷はしばらく続くと予測する。「熱心なサルコジ派だった人々も怒り、ひどく落胆している。大統領が勝利を無駄にしていると感じているようだ。カーラさんはとても賢く、思慮深く控えめな戦略を選んできた。しかし、数か月間で崩壊したものが、すぐに再建できるはと思えない」(c)AFP