【5月8日 AFP】(5月9日 写真追加)欧州の高速鉄道ユーロスター(Eurostar)は前年11月、時速343キロを達成し、今やロンドン(London)-パリ(Paris)間は2時間15分で結ばれた。それに比べ、米国鉄道のスピードは、いまだに「カメ」並みだ。

 フランスの高速列車TGVも前年、時速574.8キロの世界最高記録を樹立。アジアでも、新幹線が走る日本、台湾、中国では時速320キロは当たり前。イランも、最高時速448キロの高速鉄道システムをドイツから購入することを検討している。

 ロンドン-パリ間とほぼ同距離のワシントンD.C.(Washington DC)とニューヨーク(New York)を結ぶ高速鉄道アセラ・エクスプレス(Acela Express)の平均時速は138キロ。最高速度でも時速240キロで、ユーロスターには遠く及ばない。

 アセラ・エクスプレスを運行するアムトラック(Amtrak)は、米国の鉄道が高速化できない理由を「カーブが多すぎるため」としている。

 昔から飛行機や自家用車が主要移動手段だった米国では、鉄道発展の余地は少なかった。19世紀には、鉄道網の整備とともに西部への人口大移動が展開されたものだが、そんな鉄道も今や「遺物化」しているのが実状だ。

 だが、ガソリン価格の高騰や空の旅の煩わしさに加え、環境への関心が高まってきた昨今、ようやく鉄道に熱い視線が注がれるようになった。課題は、やはりスピードアップだ。

 次期大統領候補と目される民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員も、かつてこう言った。「高速鉄道がない先進国は、われわれだけだ」
  
■政府も鉄道の支援に乗り出す

 アムトラックは2007年、5年来で最多の乗客数ながら、4億7500万ドル(約500億円)の損失を出し、国から13億ドル(約1400億円)の支援を受けた。 

 同社は「高速鉄道化の余力はない」としているが、ジョン・ミカ(John Mica)下院議員は3月、ワシントンD.C.-ニューヨーク間を2時間以内でつなぐ鉄道高速化に向けた法案を議会に提出。さらに、米運輸省も全米の鉄道整備費用として3000万ドル(約31億円)の予算を計上している。

 米国で最も人口の多いカリフォルニア(California)州でも、北部サクラメント(Sacramento)からサンフランシスコ(San Francisco)、ロサンゼルス(Los Angeles)を経由して南部サンディエゴ(San Diego)までを結ぶ南北高速鉄道システムの建設費をまかなう州債案が、11月の州民投票にかけられる。

 投票でカリフォルニア州民のゴーサインが得られれば、全長1100キロの高速鉄道の建設が2009年にもスタートする見込みだ。(c)AFP/Michael Mathes