【4月23日 AFP】ドイツの首都ベルリン(Berlin)を訪れる観光客の中には、冷戦時代に街を東西に分離していた「ベルリンの壁(Berlin Wall)」がほとんど残っていないことにがっかりする人もいるかもしれない。そんな人には朗報だ。目の前にベルリンの壁を再現する装置が来月1日から貸し出されるのだ。

MauerGuide(壁ガイド)」と名付けられた、携帯型のマルチメディア装置を携えて街を歩くと、ベルリンの壁がその場所でどのような様子だったかを見ることができる。GPS(衛星利用測位システム)技術を使い、かつてベルリンの壁があった場所沿いの5つの主要地点について、画像、ビデオ映像、音声でその歴史を説明する。説明は英語とドイツ語の2か国語。この装置があれば、団体でこれらの地点を回る必要もない。

 これは、1961年に旧東ドイツの共産党政権によって市民の流出を防ぐために建設された壁の歴史を保存するベルリン市の計画の一環。クラウス・ヴォーヴェライト(Klaus Wowereit)市長が装置を試した後、報道官は「MauerGuideは適切に歴史を説明することができる。観光客にとって魅力的である上、われわれのベルリンの壁に関する包括的な記念計画にうまく適合している」と述べた。

 ベルリンを28年間にわたり分断していた155キロの灰色のコンクリート壁のうち、現存するのはわずか3キロのみ。壁は1989年、国境が開いたことに狂喜した旧東ドイツ国民によって壊され、大きな塊は海外に売られた。

 壁の崩壊後に起こった建設ブームにより、ベルリン中心部でかつての東西を見分けることはほとんどできない。

 市当局は2006年、残された壁の保存に4000万ユーロ(約65億5200万円)を投じる計画を発表している。

 被害者団体によると、旧東ドイツから脱出しようとして犠牲になった人は1000人を超え、大半は国境警備隊によって射殺されたという。(c)AFP