【4月21日 AFP】中国の製鉄所に勤務するある男性は、首都北京(Beijing)の歴史地区への日帰り家族旅行を、何週間もかけて計画していた。しかし今、旅行の代わりに、北京のショッピングモールで幸せそうに金のネックレスを試す妻の姿を目にしている。

■ゴールド・ジュエリーに追求される蓄財価値

「文句は言えない。わたしたちは単に金が好きなのだ」。北京郊外の工業都市、唐山(Tangshan)で働く夫のLi Zhixinさん(30)は語る。「金は蓄財の方法としてプラチナよりもいい。もちろんダイヤモンドもいいが、大きい石は買えないし、小さいダイヤには興味がない」というLiさんの傍らでは、一緒にやって来た義母が紙幣の束を数えている。最終的にLiさん夫婦は、中国都市部に住む人の平均月収2か月分を超える3000元(約4万5000円)以上の値段の金ペンダントを買った。

 中国では2007年、都市部住民1人当たりの可処分所得が前年比17.2%増しで1万3786元(約20万5000円)に届いた。ぜいたく品を何か買いたいと思っている消費者の大半にとって、金のジュエリーはもはや手の届かない品物ではない。

 北京の繁華街にあるデパートの店員は「記念日、結婚、休日の贈り物として金のジュエリーが買われている。美しい装飾品であることはもちろん、身につける人の富を見せつけるものとしても、とらえられているのではないか」と指摘する。

■貴金属尊重の伝統に、リスク回避で高まる需要

 世界の金業界団体であるワールドゴールドカウンシル(World Gold Council)の統計によると、2007年の中国の金ジュエリー販売量は前年比34%増で過去最高の302.2トンを記録。米国をしのぎ、インドに次ぐ世界第2位の金ジュエリー購入国となった。

 金ジュエリー購入量の記録的増加の背景には、社会的・経済的リスクを回避するために、貴金属を尊重するという中国の伝統的な傾向がある。北京の百貨店で孫息子への結婚祝いを選んでいた78歳の女性は「金は信用できる。昔からどんな時でも金は買われてきた」という。

 2007年以降の激しいインフレと、国内株市場の大幅下落が金の購入をいっそう加速させてもいる。

 広東(Guangdong)省深セン(Shenzhen)の先物取引業者China International Futuresのアナリストは「株式市場は以前ほど好調でない。銀行に全財産を預けることは安全でないと人々は感じており、インフレリスクを避けるために金を買う傾向にある」と指摘する。

 強い需要と国際価格の上昇により、北京での純金ジュエリー販売価格はわずか2か月で9%上昇し、3月には過去最高の1グラム当たり242元(約3600円)に達した。

 しかも中国の消費者の間では、価格高騰でひるむどころか、金を財産を守るための手段としてだけではなく、効果的な投資品目ととらえる見方も高まっている。ワールドゴールドカウンシルによると、2007年の小売りレベルでの投資目的による金需要は前年比60%増の23.9トンだった。

 しかし、若者にとっては、投資よりもファッションの方が大切なようだ。

 ボーイフレンドとジュエリー・ショップを訪れ、金のイヤリングとブレスレットを見ていた美容師の女性(25)は「わたしがほしいのはファッショナブルで特別なもの。あまり考えすぎて時間を無駄にしたくない。見た目がよければ買うわ」と語った。(c)AFP/Fran Wang