【4月21日 AFP】式を盛り上げるダンサーやミュージシャン、そして花嫁の額に、「お祝儀」のナイラ札がぺたぺたと貼りつけられる。ナイラ札を盛大にまく太っ腹もいる--ナイジェリアの結婚式でなじみの光景が今、危機に瀕している。こうした行為には法律上、5万ナイラ(約4万3000円)の罰金か禁固6年の刑、またはその両方が課されるためだ。

 ナイジェリア政府は、汚職大国の汚名を返上しようと躍起になる一方で、国民には通貨「ナイラ」にもっと敬意を払うよう注意を促している。というのも、ナイラ札はたいてい「くさい」「汚ない」「破れている」の三拍子がそろっているためだ。

 国民の多くは、ひったくりを恐れてお金を下着やソックスの中にしまう。日陰でも35℃はあるという高温多湿のなか、そうしたお金が「くさくなる」のは当然だ。

■新聞広告で「お札にしてはいけない5つのおきて」

 ナイジェリア中央銀行は、新聞にカラー全面の啓発広告を載せた。字が読めない人のために、写真付きで5つの「おきて」をわかりやすく説明している。

「ナイラ札に対してやってはいけないこと」--その1は「ナイラを不作法に保管してはなりません」。隣には、ブラジャーのカップの中にナイラ札を入れる若い女性の写真。「そのかわり、ポーチにきちんと入れましょう」。隣には、同じ女性がお金をバックパック式のマネー・ベルトに入れる写真。

 そのほか「ナイラ札をくしゃくしゃにしてはいけません、汚してはいけません、落書きしてはいけません」との注意書きが並ぶが、なかでも人々を最も困惑させ、反発を招いたのが「ナイラ札をまいてはいけません」というものだ。その隣には「お手本」として、結婚式のときにナイラ札を封筒に入れて新婚カップルに手渡す写真が付されている。

■「お札をまけない」反論続出

 同行の幹部は、ナイラ札は「ナイジェリアの窓口であり、国民そのものであり、遺産、文化、そして国家を表すもの」と、こうした啓発活動の意図を説明する。

 これについて、「ナイラ・シャワー(ナイラ札をまく行為)の恩恵を最も受けている男」と地元誌に揶揄(やゆ)された「ジュジュ音楽の王様」ことキング・サニー・アデ(King Sunny Ade)は、「ナイラ・シャワーはナイジェリアの伝統文化の1つ。お祝い事の席で貝をまいていた古来の習慣に由来する」と、非難をあからさまにしている。

 地元の「ネイション(Nation)」紙は前月、社説で「ナイラ・シャワーを廃止するには、祝い事の席を減らすか一切なくす以外に方法はない」と批判。「サンデー・トリビューン(Sunday Tribune)」紙も「緊急課題が山積みのなか、ナイラ・シャワーの廃止は最も急を要する問題なのか?」と疑問を呈した。

 2年前にはナイラ・シャワーへの罰金も盛り込んだ「ナイラ尊重法案」が議会に提出されたが、これを作成した議員が説明している最中に、複数の議員が配られた法案のコピーを破り捨てるという光景までみられた。だが、オルセグン・オバサンジョ(Olusegun Obasanjo)前大統領は任期切れ間近の2007年5月にこの法案に署名、発効した。

 一方、ナイジェリアの人々はそうしたことにはお構いなく、今日もナイラ札に電話番号をメモしたり、ナイラ札で耳をほじくったり爪を磨いたりしている。ドル札やユーロ札をまくことには、法によるおとがめはないようだ。(c)AFP/Jacques Lhuillery