【AFP】中国では現在、開発が遅れている西部内陸部で、開発計画が成功し繁栄を享受する沿海地域のモデル導入が進めらている。しかし開発ラッシュの陰では例のごとく、土地の所有権をめぐる問題が浮上している。

 過去10年間にわたり、中国の不動産市場は経済発展のけん引力となり、太いパイプでつながれた開発業者と地主はもちろん、かつては政府提供の住宅でつつましく暮らしていた人々にも、莫大(ばくだい)な富をもたらしてきた。

 不動産ブームは内陸部にも広がりつつあるが、開発業者と地方自治体が結託し、住民らが不利益を被っているとの声が聞かれる。

■個人の土地所有は夢物語なのか

 共産主義国の中国ではこれまで個人の土地所有は認められていなかったが、政府は前年、画期的な不動産法を導入。個人の土地所有が可能になり、これまで政府からの一方的な立ち退き命令などに苦汁を飲まされてきた大家や農場主らに希望を与えた。

 だが現実には、四川(Sichuan)省成都(Chengdu)郊外で閉鎖されたプラスチック工場を数十年間にわたり住まいとしてきた50家族が、立ち退きを拒否する騒ぎが起こっている。同地では、1970年代に建てられたビルの多くに「われわれは透明な政治、正義、公平性を要求する」と書かれた垂れ幕が掲げられていた。

 急速に開発が進む西部内陸部で、こうした立ち退き拒否騒動は日常茶飯事だ。同様の現象は先に発展を遂げた沿海部でもかつてみられ、いまや中国の社会不安の一因となっている。

 同省温江(Wenjiang)に住む52歳の男性は「今までずっとまじめに働き続けてきたのに、住む場所さえない。新築のアパートなど高すぎて手もでない」と憤る。

■立ち退き料は11万円

 成都に住むある家族の話では、立ち退き料として開発業者から支払われるのはわずか8000元(約11万5000円)で、地価が1平方メートルあたり3000元(約4万3000円)もする同市では、ベッド1台分のスペースしか手に入らないという。

 当局は、開発業者が住民らに有利な条件を提示するよう仲介役を果たしており、「これまでに126人が立ち退きに応じた」と説明した。しかし住民らは、当局の不動産担当職員と開発業者の癒着を指摘している。

 新たな不動産法が施行されたとはいえ、憲法は依然として「すべての土地は国に帰する」とうたっており、市民の多くが懸念をぬぐいきれずにいる。

 不動産をめぐる汚職が国内にはびこっている実態は、中央政府も認識していることだ。国営新華社(Xinhua)通信も先ごろ、前年9月からの4か月で3万1700件の違法な土地取得が当局によって摘発されたと報じた。(c)AFP/Francois Bougon