【4月2日 AFP】文部科学省が3月25日に公表した高校美術の教科書検定で、日本文教出版が収録しようとした横尾忠則(Tadanori Yokoo)さん作製のポスターが高校生に「適当でない」と判断され、別の作品に差し替えられた。

 ポスターは1965年、舞踏家の故・土方巽(Tatsumi Hijikata)氏らの公演の宣伝のために作製された。裸の姉妹が並んだ16世紀の絵画作品「ガブリエル・デストレとその姉妹(Gabrielle d’Estrees and One of Her Sisters)」をモチーフとしており、一方がもう一方の乳首をつまむ様子が描かれている。

 問題にされたのは、左上にある「私の娘展示即賣會場」の小さな文字だ。「健全な情操の育成について必要な配慮を欠いている」との意見がついた。

 日本のアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)とも称され、世界に名を馳せている横尾氏。AFPのインタビューに対し、今回の決定は「文化的鎖国」であり、呆れてしまうと語った。

 また「『私の娘』とは作品のこと。芸術家が作品をつくる場合には子どもを産むという表現をするものだ」と説明した。横尾氏によると、「私の娘展示即賣會場」という言葉は、土方氏が提案した。『作品の販売』というような「商売的でいやらしい」表現は使いたくなかったのだろうと横尾氏は言う。「このフレーズは、美術という限定された枠内の、創造的な世界の出来事として使用されているのです」

 日本文教出版の編集者は今回のように些細なところで意見がついたことについて驚いたという。個人的見解として、検定の判断は「本来の作品とは違う見方だ」と話した。(c)AFP