イラク、脅かされる女性の尊厳と生命
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【4月5日 AFP】2003年3月の米国主導によるイラク侵攻以降、故サダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領の独裁政権時代に比べ、イラクにおける女性の地位は大幅に悪化している。
NGO(非政府組織)Iraqi Women's CommitteeのShameran Marugi委員長は、「イラクの女性はいま、『平等』だけでなく『生きる権利』を求めている」と語る。
「イラクでの女性の生活があらゆる面でおびやかされているため、『生きる権利』というスローガンを使い始めました。侵攻の前までは、女性は国の政策に従っていれば普通の生活を送ることができました。公式組織Union of Iraqi Womenに所属すれば、政治・経済活動に参加することすらできたのです」
「フセイン政権の崩壊は、男も女も子どもも歓迎しました。しかし残念ながら事態を収拾できる有能な指導者がおらず、社会は変化に対応できなかったのです」Union of Iraqi Womenはフセイン政権時代の支配勢力、バース党(Baath Party)の関連組織だったため、後に解体された。
■ 平等の前に「生きる権利」を
Marugi委員長は、ここ数年で女性への暴力は大幅に増えたという。「家庭では父親、夫、兄弟、息子からすら暴力を受けます。1つの新しい社会的な文化になってしまいました」
ヘジャブ(スカーフ)を着用していない女性は路上でののしられることも多く、極端なケースでは見ず知らずの武装した男たちに連れ去られ、性的暴行を受けたあげく殺されることもあるという。
「最近では、美容師などの職に就いている、ヘジャブを着用していない、『きちんとした』格好をしていない、といった理由で脅迫されることも珍しくありません。わたしたちはいま、平等の前にまず『生きる権利』を求めているのです」
人権活動家の報告によると、南部バスラ(Basra)、北部クルド人自治区、首都バグダッド(Baghdad)では、いわゆる「名誉殺人」が多発しているという。
国連(UN)の報告によると、2007年に女性が射殺された「名誉殺人」事件は、バスラの警察が把握したものだけで44件に上るという。中には女性教師が生徒たちの目の前で射殺されたケースもあった。
■ 「全国的に危機的な状態」
米国に拠点を置く女性支援団体Women For Women Internationalは3月、2003年のイラク侵攻以来、イラクにおける女性の地位は全国的に危機的な状態にまで悪化したとするレポートを発表した。
同団体が女性に対して行った調査によると、64%が女性への暴力が増加したと回答した。その理由として、以前に比べ女性の権利が尊重されなくなった、女性は所有物とみなされている、経済が悪化しているというのが最も多い回答だった。また、76%が家にいる女児が学校に通うことを禁じられていると回答した。
ジャラル・タラバニ(Jalal Talabani)大統領の女性政策顧問、Selma Jabu氏は、イラク人女性は政治的に疎外されただけでなく、虐待されたり、路上で脅迫されたり性的暴行を受けたりすることがあるという。
「イラク人一般を狙ったテロ攻撃もあるが、性的目的の拉致など、女性を標的にした暴力もある。イラク憲法には女性の保護や支援に関する規定があるが、この面を強化するよう最大限努力している」と同顧問は語る。
■ 外出に拳銃を携行
40代の女性、Iqbal Aliさんは殺害すると脅迫され、バグダッド中心部のカラダ(Karada)地区にある美容室を閉じざるを得なかった。
「最初はすべてがうまくいっていたが、その後、国の情勢が悪化し、女性美容師が脅迫されるようになった。わたしの仕事も影響を受け、閉鎖せざるを得なかった」
Aliさんは現在、「Alwarda Albaidaa(白いバラ)」という化粧品と香水の店を営んでいる。「食糧ももらえず、政府からの補助もなく、経済的に苦しい状況だった。仕事もなかったため、借金してこの店を開く決心をした」と語る。
バグダッド北西部アダミヤ(Adhamiyah)地区の職員Suad Mohammedさんは、常に拳銃を携帯している。
Mohammedさんは前年、シーア派教徒居住地域サドルシティ(Sadr City)にある銀行に、自分で出歩くことのできない高齢の女性の給料を受け取りに行った。すると、帰り道にタクシーが向きを変えて突進して来た。
「運転手は止まろうとせず、わたしは叫んだ。そのとき、拳銃を持っていることを思い出して、自分を守ろうと決 めた。わたしの頭には女性の給料のことしかなかった。拳銃を取り出して運転手の首と手を撃った。運転手は出血したが、それでも止まろうとしなかった。最後には通りがかった軍用車に停止させられて連行された。それ以来、近所を離れるときはいつも、拳銃を持っているかを確かめている」(c)AFP/Nafia Abdul Jabbar and Marwa Sabah
NGO(非政府組織)Iraqi Women's CommitteeのShameran Marugi委員長は、「イラクの女性はいま、『平等』だけでなく『生きる権利』を求めている」と語る。
「イラクでの女性の生活があらゆる面でおびやかされているため、『生きる権利』というスローガンを使い始めました。侵攻の前までは、女性は国の政策に従っていれば普通の生活を送ることができました。公式組織Union of Iraqi Womenに所属すれば、政治・経済活動に参加することすらできたのです」
「フセイン政権の崩壊は、男も女も子どもも歓迎しました。しかし残念ながら事態を収拾できる有能な指導者がおらず、社会は変化に対応できなかったのです」Union of Iraqi Womenはフセイン政権時代の支配勢力、バース党(Baath Party)の関連組織だったため、後に解体された。
■ 平等の前に「生きる権利」を
Marugi委員長は、ここ数年で女性への暴力は大幅に増えたという。「家庭では父親、夫、兄弟、息子からすら暴力を受けます。1つの新しい社会的な文化になってしまいました」
ヘジャブ(スカーフ)を着用していない女性は路上でののしられることも多く、極端なケースでは見ず知らずの武装した男たちに連れ去られ、性的暴行を受けたあげく殺されることもあるという。
「最近では、美容師などの職に就いている、ヘジャブを着用していない、『きちんとした』格好をしていない、といった理由で脅迫されることも珍しくありません。わたしたちはいま、平等の前にまず『生きる権利』を求めているのです」
人権活動家の報告によると、南部バスラ(Basra)、北部クルド人自治区、首都バグダッド(Baghdad)では、いわゆる「名誉殺人」が多発しているという。
国連(UN)の報告によると、2007年に女性が射殺された「名誉殺人」事件は、バスラの警察が把握したものだけで44件に上るという。中には女性教師が生徒たちの目の前で射殺されたケースもあった。
■ 「全国的に危機的な状態」
米国に拠点を置く女性支援団体Women For Women Internationalは3月、2003年のイラク侵攻以来、イラクにおける女性の地位は全国的に危機的な状態にまで悪化したとするレポートを発表した。
同団体が女性に対して行った調査によると、64%が女性への暴力が増加したと回答した。その理由として、以前に比べ女性の権利が尊重されなくなった、女性は所有物とみなされている、経済が悪化しているというのが最も多い回答だった。また、76%が家にいる女児が学校に通うことを禁じられていると回答した。
ジャラル・タラバニ(Jalal Talabani)大統領の女性政策顧問、Selma Jabu氏は、イラク人女性は政治的に疎外されただけでなく、虐待されたり、路上で脅迫されたり性的暴行を受けたりすることがあるという。
「イラク人一般を狙ったテロ攻撃もあるが、性的目的の拉致など、女性を標的にした暴力もある。イラク憲法には女性の保護や支援に関する規定があるが、この面を強化するよう最大限努力している」と同顧問は語る。
■ 外出に拳銃を携行
40代の女性、Iqbal Aliさんは殺害すると脅迫され、バグダッド中心部のカラダ(Karada)地区にある美容室を閉じざるを得なかった。
「最初はすべてがうまくいっていたが、その後、国の情勢が悪化し、女性美容師が脅迫されるようになった。わたしの仕事も影響を受け、閉鎖せざるを得なかった」
Aliさんは現在、「Alwarda Albaidaa(白いバラ)」という化粧品と香水の店を営んでいる。「食糧ももらえず、政府からの補助もなく、経済的に苦しい状況だった。仕事もなかったため、借金してこの店を開く決心をした」と語る。
バグダッド北西部アダミヤ(Adhamiyah)地区の職員Suad Mohammedさんは、常に拳銃を携帯している。
Mohammedさんは前年、シーア派教徒居住地域サドルシティ(Sadr City)にある銀行に、自分で出歩くことのできない高齢の女性の給料を受け取りに行った。すると、帰り道にタクシーが向きを変えて突進して来た。
「運転手は止まろうとせず、わたしは叫んだ。そのとき、拳銃を持っていることを思い出して、自分を守ろうと決 めた。わたしの頭には女性の給料のことしかなかった。拳銃を取り出して運転手の首と手を撃った。運転手は出血したが、それでも止まろうとしなかった。最後には通りがかった軍用車に停止させられて連行された。それ以来、近所を離れるときはいつも、拳銃を持っているかを確かめている」(c)AFP/Nafia Abdul Jabbar and Marwa Sabah