【3月25日 AFP】イラクに独裁政治を敷いたサダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領は、自国に最新の電気通信技術は不要と考えていた。だがフセイン政権が崩壊して5年がたち、人々は携帯電話やインターネットの魅力に取りつかれつつある。

「インターネットはなくてはならないもの」と首都バグダッド(Baghdad)で携帯電話を販売するサジャドさんは語る。サジャドさんはよく顧客から、動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」で公開されている女優の写真や面白いビデオ映像などを携帯にダウンロードしてほしいと頼まれるという。

「経済的理由から携帯電話を通話に使用できない顧客でも、多数のビデオや画像を携帯機器に取り込んで楽しんでいる」(サジャドさん)

 フセイン政権下のイラクでは、事実上、携帯電話網は存在せず、個人が衛星電話を所有することも禁止されていた。また、電子メールは送信時にすべて中央の検閲局を経由し、問題なしと判断されたメールのみが受信者の元に届けられた。受信メールについても同様に検閲され、検閲通過後も実際の受信までに数週間を要したという。
 
 バグダッドの街中でネットカフェを営むアリさんによれば、当時、ネットカフェは市内のいくつかのホテルにあるだけで、それらもすべて政府の監視対象だったうえ、アクセスが許可されていないウェブサイトも一部あったという。

 そんな規制も過去の話だ。2003年3月の米軍侵攻以後、電気通信事業の波が一気に押し寄せ、現在は携帯電話事業者3社に加えインターネット事業者数十社が国内で営業している。

 今や数百万の国民が、インターネットでチャットや検索、デートサイトへのアクセス、最新の時事情勢チェック、フェースブック(Facebook)やHi5などのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などを満喫している。

 アリさんのネットカフェを訪れる顧客は、17歳から35歳程度の若年層が多いという。

「顧客の多くはヤフー・メッセンジャー(Yahoo Messenger)でチャットを楽しんだり、電子メールをチェックしたりしているようだ。ウイルスソフトのダウンロードや、勉強の調べ物にいそしむ顧客もいる」(アリさん)

 携帯電話ユーザーも通話以外の機能を楽しんでいる。ビデオ映像を友人と共有することが現在の流行だという。(c)AFP/Mohammed Ameer