【3月11日 AFP】多くの州で公共の場での喫煙が禁じられている米国のバーでは、タバコを吸いたい客は真冬でも屋外に出なければならない。そこで、ミネソタ(Minesota)州のバーの店主らが、愛煙家の常連のために立ち上がった。シェークスピアの名ぜりふ「人生はみな舞台」を地でいく妙案で、禁煙法の抜け穴をつく作戦にでた。

■州法の盲点突く「奇策」登場

 同州では演劇の一環として上演中の舞台での喫煙は認められていることから、Lake Mills Lacsの弁護士マーク・ベンジャミン(Mark Benjamin)さんらが中心となって前月9日、「タバコ・モノローグ」と題した演劇興行ビラを配りバーの客を「俳優」に見たてるという作戦に打って出た。

 ノンスモーカーながら抗議運動に加わったベンジャミンさんは、シェークスピア時代の衣装姿で「(禁煙法に)奇妙な例外規定が設けられていることを発見し、即座に『これだ!』と思った」とAFPに語った。「目的は禁煙法の廃止だが、その法律にわれわれの活動は違反していない」

 Lake Mills Lacsでの活動を自治体が大目に見ているうちに、この奇策は瞬く間に州全土のバーに広がった。

 こうした「公演」では、灰皿は舞台の支柱にみたてられ、数少ない「せりふ」のほとんどが単なる冗談で、店内では客がタバコをくゆらせ酒や会話を楽しみ、禁煙法以前とまったく変わらない光景が展開している。

 州都セントポール(St. Paul)郊外のナイトクラブでタバコをくゆらすサラ・ブレント(Sarah Brent)さん(38)は、「これは民衆が声を上げた抵抗運動だ」と語る。 

 嫌煙団体「Campaign for Tobacco-Free Kids」の調べによると、バーやレストランなど公共の場での喫煙を禁じている州は全米23州に上る。

 当初は苦言を呈していた喫煙家も、禁煙法の施行とともに抗議の声をあげなくなった。

■州当局は「抜け穴」ふさぎに躍起

 しかし、厳冬のミネソタではそうはいかない。冬に屋外でタバコを吸おうにも、一服する煙がまつげに達するまでに凍ってしまうのだ。

 なかでも冬の寒さが一段と厳しいことで知られる鉱山の町、アイアン・レンジ(Iron Range)のバーでは禁煙法による痛手も大きかったことから、この妙案は歓迎されている。

 同地で真っ先に「演劇興行」に飛びついたのはストリップバーだった。バーのオーナーは、「ストリッパーたちがショーの合間に一服したくても、裸で外へ出るわけにもいかず困っていた」と安堵(あんど)する。

 しかし、バーにおける「演劇興行」の広がりをうけ、同州保健担当部局は前週、こうした興行は法令違反であるとし、「演劇興行」を止めないバーには最高1万ドル(約101万円)の罰金を科すと警告している。

 主要顧客に愛煙家の多い小規模バーの店主にとって、顧客に喫煙環境を提供できる唯一の方法である「演劇」の中止は死活問題だ。禁煙法が施行されて以来、こうした店の売り上げは3割も減少しているという。

 メープルウッド(Maplewood)でバーを経営するブライアン・ボウマンさんによれば、バー店主仲間の大半は警告を受けたにも関わらず「演劇興行」を中止する意思はないという。ボウマンさんは「難しい状況だが、われわれも生活がかかっているからね」と話している。(c)AFP