【1月29日 AFP】香港(Hong Kong)の高級住宅地ハッピーバレー(Happy Valley)地区に最近オープンしたベーカリーショップは、通行人の目を引く理想的な場所にある。磨き込まれたカウンターにはおいしそうなペストリー、クッキー、ケーキなどが並び、オーブンからは焼きたてのかぐわしい香りが通りにまで漂う。

 だが、この店がターゲットとする「顧客」が、店内の棚の上にあるごちそうを見られるとは限らない。匂いをかいでいることは間違いないが。

 ここ「スリードッグベーカリー(Three Dog Bakery)」は、ペット人気が過熱する香港で、イヌたちによりぜいたくな生活を提供するための最新の専門店だ。

 香港の住民700万人の大半は小さくて窮屈なアパートに住み、多くの公園ではイヌの立ち入りが禁止されている。にもかかわらず、ペットは必需品のアクセサリーであり、それ相応に扱われている。

 米国に拠点を置くフランチャイズのスリードッグベーカリーの総括管理者ブレント・アールズ(Brent Earles)さんは「人々はペットのイヌを家族の1員と考えているため、たくさんのお金をつぎ込む」と語る。

 イヌ用グッズの種類は数え切れないほど豊富だ。イヌたちは香港のいたるところで、手の込んだ衣装を着て高級な首輪をしている。ベビーカーに乗っていることさえある。テレビ番組でも、手間暇とお金をかけてイヌを甘やかす方法を毎週のように紹介している。

 スリードッグベーカリーでも、350ドル(約3万7000円)の毛布から高級靴の形をしたふわふわのおもちゃまで、幅広い商品を扱っている。「笑わずにはいられないときがある。奇抜なものばかりだが、動物への愛情からやっている」とアールズさんは語る。

 日本で8店舗を展開して成功を収めているスリードッグベーカリーは、香港でもその流れに乗りたいかまえだ。香港の店舗を経営するClement Loさんは2店目を同エリアに同時オープンしている。イヌの登録数20万匹を誇る香港での需要を考え、5店舗まで拡大できるとみている。

 Loさんはすでに市内のレストランからイヌ専用の食事を出す話を持ちかけられているという。マカオのカジノ王スタンレー・ホー(Stanley Ho)氏の親族も、店舗開店を念頭に、スリードッグベーカリーの偵察に訪れたという。

 市内の子イヌ専門店Pet's Centralの責任者Peter de Krasselさんは「ここ5年でイヌの登録数は倍増した」と指摘する。子どもを持つ代わりにペットを飼うことを選ぶ共働きの夫婦もいるという。

 De Krasselさんは香港や中国本土が巨大市場になる可能性もあるとみており、深セン(Shenzhen)、北京(Beijing)、上海(Shanghai)への事業拡大も視野に入れている。ペットの治療のために定期的に米国を訪れる裕福なオーナーすらいるという。(c)AFP/Guy Newey