【12月19日 AFP】都心の真ん中でビールケースをひっくり返した即席の演台に立ち、必死に叫ぶ中年男性グループの姿があった。自分たちの結婚生活、そして日本社会全体の結婚を守りたいと立ち上がった「全国亭主関白協会(National Teishu-Kampaku Association)」のメンバーだ。

 彼らは自分たちの主張をできるだけ公にすることで、自分たちの価値を妻に証明しようとしている。
「いつもトイレのシートを下げ忘れて、ごめんなさい!」「キャバクラ通いはもう止めます。ごめんなさい」「普段はあまり言わないけど、愛してるよ」
 男性たちは公衆の面前で次々に妻へのメッセージを叫んだ。

 今回の集まりに参加している20人のメンバーは、同協会の憲法「愛の三原則」である「ありがとうをためらわずに言おう」「ごめんなさいを恐れずに言おう」「愛してるを照れずに言おう」を全員で唱えた。

 このユニークな集会は、同協会の会長で、福岡(Fukuoka)県在住の雑誌編集者、天野周一(Shuichi Amano)さん(55)のアイデアによるものだ。

 天野さんは1999年、20年間以上におよぶ自身の結婚生活の崩壊を防ぐためには、思い切った行動をとる必要があると感じ、「全国亭主関白協会」を立ち上げた。当時40代後半だった天野さんの周りには、結婚生活が行き詰まり離婚の危機にある仲間がたくさんいた。

 夫の退職後に妻が離婚を申し出るという事態は社会現象になり、ドラマの題材にされた。こうした妻たちの狙いは、無関心で家では何もしない夫との結婚生活に終止符を打つことだ。

 家庭を顧みずにがむしゃらに働く夫が多いが、昔のようにいつまでも亭主関白でいられるとの幻想から抜け出さなければならないと、天野さんは主張する。さらに、結婚は1人の相手を愛し続けるトライアスロンのレースのようなもので、勝敗よりも完走することが重要だと指摘する。

 天野さんは妻を喜ばせるために、洗濯、皿洗いのほか、退屈な話を興味を持って聞いているようなふりもしているという。

 雑誌の仕事で女性にインタビューをする機会を通じて、妻たちは夫が「ありがとう」「ごめんなさい」「愛してる」の3つの「魔法の言葉」をもっと頻繁に口にすることを望んでいることが分かったという。

 天野さん自身それまでほとんど感情を表現することはなかったので、初めて自分の口から出たこうした言葉は、とても空虚に響いたという。妻も最初は夫の変化にかなり懐疑的だったが、徐々に笑顔を取り戻していったという。

 同協会には現在、20代から60代まで全国で約4000人のメンバーがいるが、離婚者は1人もいないという。メンバー皆、数々の危機を乗り越え、多くの問題を解決するすべを学んでいるからだ。

 協会では10段階の「亭主関白道段位認定基準」を設けている。初段は「3年以上たって『妻を愛している』人」で、天野さん自身は現在、五段の「愛妻と手をつないで散歩ができる人」だという。最高段位十段の「『愛している』を照れずに言える人」を目指し、努力の日々が続いている。(c)AFP