【11月19日 AFP】英国エリザベス女王(Queen Elizabeth II)とフィリップ殿下(Prince Philip)は20日、結婚60周年のダイヤモンド婚式を祝う。仲の良いカップルから王室のトップとなった二人の「パートナーシップ」は揺るぎなく、同時にミステリアスでもある。

 少女時代のエリザベス王女が遠戚のフィリップ王子に会ったのは1939年。王女は13歳、王子は18歳だった。王子はテニスコートのネットを飛び越えてみせ、王女を楽しませた。

 金髪碧眼のさっそうとした王子にひと目で恋に落ちたと、のちに女王は語っている。その後、2人は連絡を取り合うようになった。

 エリザベス女王の伝記を手がけた作家のMarc Rocheさんは、「2人は、正反対の者同士が引かれ合った典型的な例。女王はまじめで内気ですが、フィリップ殿下は外向的で、社交を好み、ユーモラスです。2人は互いに補い合っているのです」と語っている。

 エリザベス女王とフィリップ殿下の結婚式は1947年11月20日にロンドンのウェストミンスター寺院(Westminster Abbey)で行われ、戦争で荒廃した英国に活気を与えた。

 結婚後、英国海軍の将校として将来を嘱望されていたフィリップ殿下がマルタにある海軍基地に派遣されたため、2人はマルタで結婚生活を始めたが、そこでの気ままな生活は長くは続かなかった。1952年2月6日に国王ジョージ6世(King George VI)が逝去し、25歳のエリザベス王女は「帝国の栄光」が遠のきつつある英国の女王となった。

 同時に、フィリップ殿下は軍人としてのキャリアに終止符を打ち、生涯、妻の影として暮らすという宿命を受け入れた。以来、無数の公務を行うエリザベス女王の数歩後ろを歩き、静かに隣りに座っている。

 フィリップ殿下はこうした生活を送るなか、その「辛らつな言い回し」に磨きをかけていった。ある時、自身の立場について「アメーバみたいなものだ」とジョークを述べたという。

 多忙な公務のため2人の生活は別々の時間が多く、邸宅も別だが、朝食と夜のお酒の時間は2人で過ごしているという。

 86歳のフィリップ殿下は今でも頻繁に外出するが、81歳のエリザベス女王は予定がなければ自宅で過ごすことを好む。

 1950年代には、脇役となることに疲れたフィリップ殿下が複数の浮気に走ったとのうわさも飛び交った。それでも女王が自分を見失うことはなかったと、いとこの1人は伝えている。

 2人の子どもであるアン王女(Princess Anne)、チャールズ皇太子(Prince Charles)、アンドルー王子(Prince Andrew)、エドワード王子(Prince Edward)には、フィリップ殿下の意向で厳しい教育が行われた。チャールズ皇太子は自分の母校であるスコットランドのゴードンストン・スクール(Gordonstoun school)が嫌いだったという。

 「幸せな結婚に不可欠なのは、忍耐だということを学んだ」と、フィリップ殿下は結婚50周年記念を迎えた1997年に述べている。

 2人の軌跡を著書「Philip and Elizabeth: Portrait of a Marriage(エリザベス女王とフィリップ殿下:結婚の肖像)」に記した著者Gyles Brandrethさんは、「2人の公務におけるパートナーシップが素晴らしいことは歴然たる事実だ。しかし、幸せの意味がなんであるにせよ、彼らは幸せなのか」と問いかける。

 さらにRocheさんは、「2人の結婚は幸せなものだと思う」と述べたうえで、「彼らの結婚は現代人には多少、理解しがたいもので、日々の生活、家族、そして夫婦としての存在が公務によって支配されている」と語った。(c)AFP/Eric Thomas