【11月3日 AFP】アラブ諸国の女性たちが求めているのは、米国人女優アンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)の魅力的な唇や、レバノン人歌手Haifa Wehbeの高い鼻や豊満な胸。女性たちは今、理想とする芸能人の写真を握り締め、中東における美容整形の中心地となったレバノンに大挙して押し寄せている。

 ベイルート(Beirut)で美容整形外科を開業している形成外科医のTony Nassar氏はAFPに対し、「レバノンでは2000年に美容整形のブームが始まり、中東の『美容整形ツアー』の目的地となった」と語る。

 鼻や尻、胸の整形手術を受けるためにレバノンを訪れるのは石油が豊富なアラブ諸国の老若男女。評判の割には安価な手術と、同国の気候やナイトライフが魅力のようだ。

 公式統計はないが、業界関係者によると、レバノンでは年間150万件の美容整形手術が行われており、さらにボトックス注射によるしわとりやコラーゲン注入など外科手術を伴わない「プチ整形」は1000万件に上るという。

 また、顧客の年齢層は14-75歳で、お気に入りの芸能人のようにしてほしいとの注文が多い。

 一方で、政治危機の長期化や相次ぐ政界要人の暗殺などが、レバノンをアラブ地域における美容整形の中心地となることを難しくした。

 美容整形外科の経営者Elias Shammas氏によると、2005年に起きたラフィク・ハリリ(Rafiq Hariri)元首相の暗殺事件以降、収入が70%減少したという。しかし、「現在は顧客数も回復しており、今年8月は240件の整形手術を行った」と語った。

 Nassar氏は、「レバノン人女性にとって、美しくあることは国家的な義務で、ぜいたくではない。女性は互いに美しさを競い合い、美容整形手術はタブーでなく自慢すべきものとなった」と述べる。(c)AFP/Lamia Radi