【10月8日 AFP】(10月11日一部更新、写真追加)パリ(Paris)のルーブル美術館にほど近い老舗ワイン販売店Caves Legrandの陳列棚では、ワインやシャンパンのボトルに混じって日本語の文字が踊る日本酒のボトルが目を引く。

 9月のある晴れた午後、同店にワイン評論家らが集まって高級酒の試飲会が行われた。パリでは数軒の高級ワイン店が吟醸酒を扱っており、同店は月に十数本の日本酒を売り上げる。

 2006年の日本酒の輸出量は100万リットルを超えた。主な輸出先はアジア諸国と米国だ。フランスの輸入量は約13万リットルで、世界の日本酒市場で11位にとどまっている。しかし、すしや刺し身、天ぷらの人気が浸透する中、気難しいパリジャン相手に、ワインに代わって最高級の日本酒を飲んでもらおうと、酒造メーカーが攻勢をかけている。

 試飲会では長野県で18代続く酒造家出身のセイコ・ルルベル・ヒラバヤシさんが、日本酒の歴史を説明した。一般的な日本酒は素朴でジンに似た香りだが、ヒラバヤシさんの実家が手がけてきた吟醸酒は、軽くみずみずしい口当たりで白ワインに近いという。

 フランスで吟醸酒が成功すれば、日本とは逆の現象になるとヒラバヤシさんは言う。これまで日本酒は辛口の単純な飲み物というイメージがあり、味わいは求められていなかった。しかし日本の消費者が輸入されたフランスワインになじむようになったのと同様、フランスではより洗練された酒が求められるようになっているという。

■日本酒のイメージ払しょく狙う

 Caves Legrandの近くの日本食料品店Isse Workshopでは、持ち帰りのすしを買っていく客や日本料理教室に参加する若いフランス人に、同店ソムリエのケイ・ミヤガワさん(45)が吟醸や大吟醸などの高級酒を勧めている。

 ミヤガワさんは「酒」ではなく「吟醸」と呼び、使うのはおちょこではなくワイングラス。日本酒の香りを引き出すためと、そのイメージを変えるためだ。フランスでは、酒といえば日本料理や中華料理で食事の終わりに出されるアルコール度数が高く安っぽい飲み物というイメージがあるという。

 この店では4か所の醸造所から直輸入した日本酒が、月におよそ400本売れる。典型的な日本酒愛好家は、30代のおしゃれな男性で、贈り物にしたり友だちを驚かせるために、1瓶35-65ユーロ(5800-1万円)の日本酒を買っていくという。

 日本酒はレストランで普及拡大が見込めるとミヤガワさんはみている。パリには約600店の日本食レストランがあるが、高級吟醸酒を出しているのは50店ほど。ここ5年でその数は増えているという。

 日本酒は日本食レストランに限られるべきではないというのがミヤガワさんの考えだ。例えば、グラスに入った吟醸酒は、魚のグリルフォアグラソース添えにもよく合うと勧めている。(c)AFP/Emma Charlton