【10月11日 AFP】(10月13日一部更新)「世界トイレ協会(World Toilet Association)」は11月11日に、同協会発足を記念して世界に唯一の「トイレの形をした住宅」を一般公開する。

 この家は、世界トイレ協会の会員、沈載徳(シム・ジェドク、Sim Jae-Duck)氏が、160万ドル(約1億9000万円)をかけて建設中の自宅。「清潔なトイレの世界普及」という同氏が進める運動の促進を狙いとしている。

■屋内にも高機能満載のトイレが3つ

 建設地は、ソウル(Seoul)から南40キロに位置する沈氏の故郷、水原(スウォン、Suwon)市内。もともと沈氏の自宅があった場所に建てられている。広さ419平方メートルのコンクリートとガラス張りで、寝室2つ、客室2つなどを備えた2階建てになっている。

 中にはもちろん、豪華なトイレが3つある。外観は、屋外から丸見え状態の「トイレ」だが、屋内のトイレは中が見えないようになっている。ガラスの壁で仕切られた展示用のトイレは建物の中央にある。あとの2つは優雅な内装や節水装置に特徴があるという。展示用のトイレには、使用者に安らぎを感じさせる霧の噴射装置のほか、エレクトロニクスのセンサーにより入室時に自動的にふたが開き音楽が流れ出す機能なども備えている。

 家の前には小川が流れ、小さな庭園もある。ちなみに、この家の名前はHaewoojae。「心配事を解決するための聖なる場所」という意味だ。

 この家は、1日5万ドル(約590万円)の賃貸料を支払えば、沈氏の家族が引っ越すまで貸りられるそうだ。収益金は、途上国での公衆衛生施設整備運動に用いられる。

■「世界中に清潔なトイレを」という夢の実現に向け

「洗面所で生まれた赤ん坊は長生きする」。--この祖母の言葉を信じ、母親はわざわざ沈氏を洗面所を産んだのだという。トイレで生まれた沈氏は現在74歳。トイレとともにその人生を歩むことを決意しているようだ。

 彼が清潔なトイレの普及運動を開始したのは、水原市の市長だった1995年から2002年の間。「トイレを清潔で美しく、文化に満ちた心休まる場所にしよう」というキャンペーンを開始したおかげで、市民から「トイレ市長」というニックネームを奉られたという。

 水原市の公衆トイレは絵画や新鮮な花々が飾られ、小さな庭などもある意匠を凝らしたものになった。この成果に気をよくした沈氏は、サッカーワールドカップ日韓共催大会を3年後に控えた1999年、韓国トイレ協会(Korea Toilet association)を創設。その後、「清潔なトイレの実現」という沈氏の夢は、世界に向けて広がっていく。

 国会議員でもある彼は、世界トイレ協会の第1回世界大会に70か国から300人の代表の受け入れを予定している。会最終日には、自宅に、出席者を招きたいという。

 トイレ型の家は、「生活の中心にトイレを置く」という新発想を提案するものだという。この家が、世界規模での公衆衛生改善の必要性を理解するきっかけになってほしいと、沈氏は願っている。(c)AFP/Lim Chang-Won