北極圏の永久凍土の地で野菜栽培
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【8月22日 AFP】北極圏から数百キロ南方のバフィン島(Baffin Island)イカルウィット(Iqaluit)の永久凍土の地で、野菜を栽培する実験が行われている。
北極圏の吹雪の中でも持ちこたえるスチール鉄骨製の温室の中では、レタス、ニンジン、トマトや豆、香草類など20種が順調に育っている。
野菜の栽培はイカルウィットでは初めてで、北極圏では2例目となる。
イカルウィットでは野菜や果物の入手を空輸に頼っており、野菜価格は非常に高価となる。そのため、コスト削減をめざし、Iqaluit Greenhouse Societyのメンバー75人が現地での温室野菜栽培を試みた。
2005年、ノースウェスト(Northwest Territories)準州のInuvikの老朽化したアイスホッケー場で野菜が栽培されたことにヒントを得て、メンバーらは当初、数百万ドルをつぎ込みイカルウィットに巨大な温室ドームの建設を進めたが、資金不足で計画は頓挫した。
続いてメンバーらは2006年、15万ドル(約1600万円)の予算で暫定的に中規模の温室を建設。北緯60度の地点で栽培可能な作物を探り当てようとした。
メンバーらは実験を開始した6月から、昼休みや勤務終了後の時間を利用して週1時間半を温室での野菜栽培実験に費やしてきた。
プロジェクトを支援するヌナブット研究所(Nunavut Research Institute)のMary Ellen Thomasさんは、実験の動機について「北極圏のコミュニティも栽培できる作物があるかどうか知りたかった」と説明する。
イカルウィットでの野菜や果物の価格はカナダ最大の都市トロント(Toronto)の約4倍。そのうえ、保存にも電気代がかかることから、高額の食料費は貧困や栄養不良の原因にもなっているとThomasさんは指摘する。
自宅で野菜栽培を試みる住民もいるが、極寒のイカルウィットでは室内で発芽させたあと短い夏の8から10週間のみ屋外で栽培するため、植木鉢への植え替えが必要となるなど手間がかかるうえ、成功例も少ない。
「イカルウィットでは毎月のように降雪があり、屋外での野菜栽培は難しい」
現地の最高気温は8月でも12度ほど。しかし、温室内は40度に保たれている。
温室の屋根には、風速や降雨、湿度、室内外の温度を測る「気象計測装置」が設置されており、温室内を最適状態に保つため自動で換気を調整する。また、凍土の影響を避けるため、床には25センチ厚のフォーム材が敷かれている。
Iqaluit Greenhouse SocietyのPeter Workmanさんは、温室の成功がイカルウィットの人々の健康な生活を促進することを願っている。さらに「ガーデニングは精神衛生面でも非常に良い」という。
一方で、グループはさまざまな問題にも直面した。Workmanさんによると、まず種の入手が困難だったという。
「実験を始めた6月には、カナダ南部での種付け時期は終了しており、多くの種業者が店頭から商品を引き上げてしまっていた」
また、他の地域に比べて日照時間が短いことも悩みだ。Iqaluit Greenhouse Societyでは、栽培期間を通常より2か月多めに見積もって5月に種をまき、10月末に収穫したいとしている。
Workmanさんは地球温暖化について、一般的には北極の氷が溶解し北極海で漁を行うイヌイットの生活を圧迫するなど負の側面が大きい一方で、北極圏でのガーデニングにとっては良い面もあると語る。(c)AFP/Michel Comte
北極圏の吹雪の中でも持ちこたえるスチール鉄骨製の温室の中では、レタス、ニンジン、トマトや豆、香草類など20種が順調に育っている。
野菜の栽培はイカルウィットでは初めてで、北極圏では2例目となる。
イカルウィットでは野菜や果物の入手を空輸に頼っており、野菜価格は非常に高価となる。そのため、コスト削減をめざし、Iqaluit Greenhouse Societyのメンバー75人が現地での温室野菜栽培を試みた。
2005年、ノースウェスト(Northwest Territories)準州のInuvikの老朽化したアイスホッケー場で野菜が栽培されたことにヒントを得て、メンバーらは当初、数百万ドルをつぎ込みイカルウィットに巨大な温室ドームの建設を進めたが、資金不足で計画は頓挫した。
続いてメンバーらは2006年、15万ドル(約1600万円)の予算で暫定的に中規模の温室を建設。北緯60度の地点で栽培可能な作物を探り当てようとした。
メンバーらは実験を開始した6月から、昼休みや勤務終了後の時間を利用して週1時間半を温室での野菜栽培実験に費やしてきた。
プロジェクトを支援するヌナブット研究所(Nunavut Research Institute)のMary Ellen Thomasさんは、実験の動機について「北極圏のコミュニティも栽培できる作物があるかどうか知りたかった」と説明する。
イカルウィットでの野菜や果物の価格はカナダ最大の都市トロント(Toronto)の約4倍。そのうえ、保存にも電気代がかかることから、高額の食料費は貧困や栄養不良の原因にもなっているとThomasさんは指摘する。
自宅で野菜栽培を試みる住民もいるが、極寒のイカルウィットでは室内で発芽させたあと短い夏の8から10週間のみ屋外で栽培するため、植木鉢への植え替えが必要となるなど手間がかかるうえ、成功例も少ない。
「イカルウィットでは毎月のように降雪があり、屋外での野菜栽培は難しい」
現地の最高気温は8月でも12度ほど。しかし、温室内は40度に保たれている。
温室の屋根には、風速や降雨、湿度、室内外の温度を測る「気象計測装置」が設置されており、温室内を最適状態に保つため自動で換気を調整する。また、凍土の影響を避けるため、床には25センチ厚のフォーム材が敷かれている。
Iqaluit Greenhouse SocietyのPeter Workmanさんは、温室の成功がイカルウィットの人々の健康な生活を促進することを願っている。さらに「ガーデニングは精神衛生面でも非常に良い」という。
一方で、グループはさまざまな問題にも直面した。Workmanさんによると、まず種の入手が困難だったという。
「実験を始めた6月には、カナダ南部での種付け時期は終了しており、多くの種業者が店頭から商品を引き上げてしまっていた」
また、他の地域に比べて日照時間が短いことも悩みだ。Iqaluit Greenhouse Societyでは、栽培期間を通常より2か月多めに見積もって5月に種をまき、10月末に収穫したいとしている。
Workmanさんは地球温暖化について、一般的には北極の氷が溶解し北極海で漁を行うイヌイットの生活を圧迫するなど負の側面が大きい一方で、北極圏でのガーデニングにとっては良い面もあると語る。(c)AFP/Michel Comte