【8月12日 AFP】大澤一恵（Kazue Osawa）さんは、エルビル・プレスリー（Elvis Presley）には似ても似つかないし、おそらくエルビスの歌詞もすべてを理解しているようには思えない。しかし真っ赤なジャンプスーツでステージに立つオオサワさんがエルビスのパワーを感じていることだけは間違いない。

　日本の伝統的な歌謡曲を聞いて育った大澤さんだが、今や、エルビスの追悼アルバムをリリースし、エルビスの『(Let Me Be Your) Teddy Bear』を歌って聴衆を熱狂させる筋金入りのエルビス・ファンだ。

　ブロンドメッシュの入ったボーイッシュなヘアに、「テキサス」の文字をかたどったイヤリングをした大澤さんは、エルビスの没後30周年にあたる今月16日、世界中の無数のファンとともにエルビスの故郷のメンフィス（Memphis）を訪れる。

　日本からイタリア、そしてタイからチリに至るまで、エルビスはいまでも世界中で「ロックンロールの王様」として君臨している。その粋で官能的な歩き方や、曲のテーマである愛と熱望は、文化や言葉をこえて人々の心の琴線を激しくかき鳴らす。

　米国南部の片田舎に育ったにもかかわらず、あるいは部分的にはそれ故に、米国が第2次大戦後グローバルな影響力を持つようになったことと軌を一にして、エルビスは史上最初のグローバルなポップ・スターになった。

　今もファンクラブは45か国に存在し、米国のベビーブーム世代の最初の大統領ビル・クリントン（Bill Clinton）氏や、小泉純一郎（Junichiro Koizumi）前首相もエルビスの熱烈なファンだ。

　65歳の小泉氏はエルビスの曲を集めたCDのために自ら解説書を書いたり、前年、メンフィスのエルビスの自宅グレースランド（Graceland）を訪れた際には、ジョージ・W・ブッシュ（George W. Bush）米大統領の前でエルビスの物まねをしたりするほどの熱狂的なファンだ。

　小泉氏は東京の原宿にエルビスの像を建てる際に献金もしている。

　キャシー・オオサワ（Kathy　Osawa）という芸名を名乗る大澤さんは、実年齢は明らかにしなかったが、最初にエルビスの曲を聴いたのは1991年、チョコレートのテレビコマーシャルで流れた曲だったと明かした。

　大澤さんはエルビスが子供の時に通ったミシシッピ州のTupeloの教会でゴスペル音楽を聴いたときには、宗教には関心がなかったにもかかわらず涙があふれ、鳥肌が立ったという。(c)AFP/Shaun Tandon