【7月30日 AFP】インドネシアの漁師が2か月前、「生きた化石」と呼ばれる希少なシーラカンスを釣り上げ、日本やフランスの国際研究チームが現地で調査に当たっている。

 シーラカンスは5月19日、スラウェシ(Sulawesi)島北部マナド(Manado)近郊で釣り上げられた。漁師のジュスティヌス・ラハマ(Justinus Lahama)さんは息子とともに川を小舟で海まで下り、いつものように沖合い200メートル付近で釣り糸を垂れていた。

「針が3つ付いた約110メートルの釣り糸を伸ばしていくと、3分ほどたったところで大きな獲物の感触があった」とラハマさんは振り返る。

 30分かけて糸を巻き上げた末、ようやく水深20メートル付近でもがく魚影が見えてきたが、その姿を目にした時は、夢を見ているのかと思ったという。 「巨大な魚だった。蛍光灯のように光る緑の目と、足を持っていた。もし釣ったのが夜だったら怖くなって海に戻してしまっただろう」。

 ラハマさんが釣り上げたシーラカンスは体長1.3メートル、体重50キロ。アジアで生きたまま捕獲されたのは、1998年にやはりマナドで捕まったのに続き、まだ2匹目だという。最近ではアフリカ北部沖のコモロ諸島を中心とする区域でしか見つかっていなかったため、今回の発見は魚類研究者を驚かせた。

 シーラカンスは肺魚に近い種で、通常は水深200~1000メートルの深海に生息、成魚は体長2メートル、体重91キロにもなる。1938年に発見されるまでは、恐竜の絶滅と同時期に死に絶えたと思われていた。発見されているシーラカンスの化石で最古のものは3億6000万年以上前にさかのぼるが、生きたまま発見された個体と比較すると、ほとんど進化の跡が見られない。

 ラハマさんのシーラカンスは釣り上げられてから30分たっても水の外で生きていたが、海沿いにあるレストラン前で網を掛けたプールに入れられた後、17時間で死に、その後冷凍された。今後はマナドの博物館に展示される予定だという。

 現地へ飛んだフランスの研究チームは、ラハマさんの小舟に音波探知機とGPS(衛星利用測位システム)を装備して、「世界最古の魚」を釣り上げた時の様子をそのまま再現するよう要請した。今後、日本やインドネシアの科学者と共に仏研究機関の協力を得て解剖を行い、遺伝学的な分析も実施する。

 釣り上げられた場所が沿岸から近く、深さもわずか105メートルの地点だったという点にも、研究チームは注目している。コモロ群島のシーラカンスよりも、インドネシアのシーラカンスの方が浅い海に生息しているのかという疑問が持ち上がっている。(c)AFP/Ronan Bourhis