【7月27日 AFP】テーブルに並んだフカヒレのスープも、フォアグラも、高級スープの佛跳牆(ぶっちょうしょう)も、実は本物に不思議なくらいそっくりな石からできている。

 石と鉱物でつくる52種類の高級料理と珍味を集めた「A Banquet In Stone(石の晩餐)」がシンガポール国立博物館(National Museum of Singapore)で8月12日まで開催されている。

 揚州チャーハンに点心各種といった庶民的な中華料理から、高級珍味のキャビアにいたるまで、食の東西が融合した「メニュー」は総額65万ドル(約7800万円)の値段がついている。台湾以外での同展開催は今回が初めて。

 「料理」を構成する石は、台湾の元技術者Hsu Chun-Iさん(60)が長年、趣味で集めてきたもの。削ったり染色したりといった加工は一切施されておらず、本物の料理に似ている石だけが選別されている。

 石の蒐集というのは、中国の年配者の間で広範に行われている趣味で、中国文学の世界にも石の鑑賞に関する記述はしばしば見受けられる。

 Hsuさんは21歳でこの趣味に目覚め、10年後には食べ物に似ている石の蒐集を始めるようになった。きっかけは1990年代後半に台北の国立故宮博物院(National Palace Museum)に展示され、当時話題を集めた白菜、肉片にそっくりの小さな石だった。

 展示料は受け取らず、年金と貯蓄収入で生活しているHsuさんの「料理」コレクションの中でも、最も高価な一品は「豚足と豆のスープで煮込んだ卵」で、8万5000ドル(約100万円)の価値がある。

 石はゴビ砂漠や内モンゴルなど中国で採取されたものが70%占め、残りはアジアや世界各地で採取された。(c)AFP/Rachel Lim