【6月23日 AFP】フランスは世界最大のワイン生産国だが、その同国がワイン包装の分野で過去12年間に起こした革新といえば、バッグ・イン・ボックス(bag-in-boxBIB)くらいだ。

 それでもフランスのBIBワインは、「夏のパーティの惨劇」と呼ばれることのある英国や、米国のそれと比べ品質が格段に高いため、革新のペースの遅さはあまり問題にされなかった。

 オーストラリアやニュージーランド、、南アフリカなどのワイン新興国に比べ、フランスのワイン等級制度はとても複雑だ。このため、包装技術やブランド構築の革新は立ち後れてきた。

■風味保つ「安心感」

 仏スーパー大手Auchanのワイン部門責任者、オリビエ・ムーシェ(Olivier Mouchet)氏は、現在ボルドー(Bordeaux)で開催中の世界最大のワイン見本市「ヴィネクスポ(Vinexpo)2007」の会場で、「フランスでは、ワインはとても複雑だ。だから消費者は、目新しさではなく安心感を求める」と指摘した。

 BIBがフランスに導入されたのは1980年代。当時の製品は気密性が低く、いったん開封すると直ちに飲まなければならなかったため、長い間ほとんど注目されなかった。

 新時代のBIBは、箱の中に機密性の高いプラスチック製の袋が入っており、飲んだ分だけ収縮する。さらに、容器内を自然に密封させるタップにより、ワインの風味を損なうことなく1杯ずつ飲むことを可能にした。

 ムーシェ氏によると、現在フランスのスーパーで売られているワインの15%がBIBを採用しており、Auchanでもそうしたワインの販売量が過去5年で倍増したという。

 世界的には今後、より高級なワインもBIBや、軽量ガラスボトル、1970年代に開発されリサイクル面で注目を集めるペットボトルなどで販売されることになるという。

■軽量グラス、ペットボトルなど多様化

 英国のコンサルタント会社、ワイン・インテリジェンス(Wine Intelligence)のブライアン・ハワード(Brian Howard)氏は、「最高級のボルドー(Bordeaux)やブルゴーニュ(Bourgogne)でさえ、軽量ガラスボトルやペットボトルで販売されることになるだろう」と語る。

 ハワード氏は、包装は環境問題など外部要因の影響も大いに受けるとし、「環境的、社会的要因により、ワインパッケージングの新時代が始まりつつある。5年後には、アスコット(Ascot、英国最大の競馬レース)の観客も軽量ガラスボトルを選ぶようになるだろう」と断言する。

 さらに、「日本の若者はペットボトルを選択するかもしれないと」指摘した上で、いずれにせよ包装容器の選択では、小売業者とメディアの影響が大きいと説明した。

■コルクのマイナスイメージに嘆く生産者

 その一例に、ハワード氏は英ガーディアン(The Guardian)紙によるヤマネコ救済キャンペーンとして、生息地のコルクの森を守るためコルク栓のワインの購入を呼びかけたことを挙げた。このキャンペーンは、ワイン業界で長い間続いている、コルクとスクリューキャップのどちらを使うべきかという論争に関係していた。

 世界最大のコルクメーカー、コルティセイラ・アモリン(Corticeira Amorim)のアントニオ・アモリン(Antonio Amorim)会長は、合成コルクやスクリューキャップに売上を奪われたコルク業界は、マーケティング戦略の改善が必要だという。

 アモリン会長は、「回収ルートさえ確立できれば、コルクは100%リサイクルできる素材」と語り、「コルク栓よりスクリューキャップが環境に優しい」という「誤認」があることに嘆く。
 「多くの人間が環境問題を語っておきながらアルミのキャップを使っている。有機ワインにさえスクリューキャップが使われている」(c)AFP/Sophie Kevany