【6月20日 AFP】スペイン料理界の著名なシェフ、フェラン・アドリア(Ferran Adria)氏が、ドイツ西部カッセル(Kassel)で開催中の現代美術の祭典「ドクメンタ(Document)」に、料理人として初めて招待された。

 同氏はドクメンタでの記者会見で、実験的なスペイン料理を提供し、料理評論家らに世界一と評価される自身のレストランを訪れることは「美術館を訪問するようなことだ」と述べた。


 スペインのバルセロナ(Barcelona)にあるアドリア氏のレストラン「エル・ブリ(El Bulli)」では、例えばデザートとして、パルメザン・チーズのアイスクリームを用いたサンドイッチや、泡状にしたトリュフクリームの乗ったカプチーノ、野菜のアイスキャンデーなどが供される。

 芸術展であるドクメンタに同レストランを「出展」するよう要請された同氏だが、自身の味の秘密は20年間、エル・ブジのキッチンのみで調理をしてきたことだとして、これまでさまざまな「誘い」や出張依頼をかたくなに断り続けてきた。

 代わりにドクメンタ開催中、同展関係者から毎日2人をエル・ブリでの「美食の体験」に招待した。アドリア氏は、「エル・ブリで20年間やってきて、時にあちらこちらで料理をしてくれと頼まれるが、演劇やオペラのステージのようなもので、わたしは自分のステージであるキッチンを離れられない」と語る。

 さらに「エル・ブリは美術館だ。芸術とは何かをわたしが決め、食の境界を広げようと努力している。わたしの料理で大切なのは、料理だけではなく、わたしのレストランを訪れるという体験すべてだ。予約を取り、その日を心待ちにする。飛行機と車を乗り継いで小さな港町にたどり着き、30種類の料理を味わう。この過程すべてが、わたしの作品だ」と自信に満ちた言葉を折り混ぜながら、自身のレストランへいざなった。

 エル・ブリは4月、『レストラン(Restaurant)』誌が選ぶ世界のトップ・レストラン・ランキングで、ロンドン近郊ブレイ(Bray)にある「ザ・ファット・ダック(The Fat Duck)」を抜き、1位となった。(c)AFP