【ロンドン/英国 28日 AFP】英国紙ガーディアン(Guardian)28日付けは、「ヘンリー王子(Prince Henry、22)がイラクに派遣されれば誘拐する」とする武装勢力のインタビュー記事を掲載した。

■シーア派最大民兵組織の警告

 イスラム教シーア派最大の民兵組織マフディ軍(Mahdi Army)のバスラ(Basra)の司令官を務めるAbu Mujtaba氏が語ったもので、「目的はヘンリー王子を誘拐すること。英軍基地内には、王子の到着時期の情報を提供する人間が潜入しており、王子の居場所を突き止める特殊部隊もある」と語った。マフディ軍は、シーア派強硬指導者、ムクタダ・サドル(Moqtada al-Sadr)師の民兵組織だ。

 司令官はさらに「王子を誘拐しようとしているのはわれわれだけではない。英国や米国を憎む者なら誰でも同じことを考えている。イラク国内のムジャヒディン(イスラム戦士)、アルカイダ(Al-Qaeda)組織、イラン人の勢力も誘拐を計画している」と続けた。

■「見え透いたプロパガンダ」と英国防省

 しかし、ガーディアン紙は「マフディ軍への情報提供者が英軍基地に潜入している、あるいはヘンリー王子誘拐のための特殊部隊が存在する客観的な証拠はない」と指摘し、英国防省関係者も発言は「見え透いたプロパガンダ」と強く非難している。

 イラク駐留英兵の死亡が急増したため、軍首脳はヘンリー王子のイラク派遣決定の見直しに入ったとの新聞報道を受け、英国防省は26日、王子が武装勢力の標的になり得るとの懸念から計画を再検討していることを明らかにした。

■王子は従軍を希望

 英国王位継承順位第3位のヘンリー王子は、ウェールズ少尉(Cornet Wales)の名で近衛騎兵第2連隊「ブルーズ・アンド・ロイヤルズ(Blues and Royals)」に所属し兵士11人を指揮する立場にある。軍関係筋は「前線の戦闘に参加できなければヘンリー王子は退役する」と指摘するが、王子の友人らは「退役は考えられない」と語った。

 写真は英国内で軍事訓練に参加するヘンリー王子(撮影2005年11月)。(c)AFP/CROWN COPYRIGHT