【ハラレ/ジンバブエ 5日 AFP】首都ハラレ(Harare)北方のハトクリフ(Hatcliffe)タウンシップ(旧黒人居住区)の学校の教室には、空席が目立つ。経済が荒廃したジンバブエでは、これは見慣れた光景になっている。

 新学期が始まって数週間がたつ学校で、1クラス34人中6人がまだ姿を見せず、教師のAaron Maturureさんは心配をしながら待っている。「子どもたちは学校をとても楽しみにしており、ちょっとやそっとじゃ休みません。授業料を払えなかったか、制服を買うことができなかったのでしょう。この国では物価が異常に上昇していますから」

 同国では、公立学校の授業料は私立よりは安い。さらに、奨学金制度もいくつか用意されている。しかしながら、「施設の改修や教材の充実化」のために公立学校の授業料が最大1000%値上げされ、前年12月のインフレ率が過去最高の1281%を記録する中で制服や学用品などの値段も跳ね上がり、多くの学童にとって教育は「高嶺の花」というのが実情だ。

■ 4万5000人が中退、教師も昇給求めて隣国に

 急進派教職員組合のTakavafira Zhou代表によると、1月の新学期開始以来、全国で少なくとも4万5000人が学校を中退し、教師約5000人が、給料の高い南アフリカなどに職を求めて、退職した。同代表は、「残りの教師への負担が増え、結果的に教育レベルの低下を招く」「教育を受ける機会は、本人の実力ではなく、経済力で決まるという『逆行』減少が起こっている」という2つの危ぐを表明した。

 貧困家庭では、まさに、「飢え」か「教育」かの選択を迫られる状況にある。「3人の子どものうち2人を学校に入れましたが、結局、授業料を払うことができませんでした」と、ハラレ北部の貧困地区の住人の1人は語る。別の住人は、「値段が高いという理由で小学校にも行けない子どもたちに、どんな将来があるというのでしょう」と嘆く。彼の3人の子どもは、制服を着ていないという理由で家に帰されたという。

■ 高い授業料

 公立小学校の平均授業料は、1学期120ドル(約1万4000円)と、前年の4倍強に値上がりした。靴、スニーカー、プルオーバー、ブレザー、帽子を含めた制服一式の費用は、今や最大約1600ドル(約19万円)となっている。

 使い古しの制服を補正するという方法も、材料費が高いことから、庶民にはなかなか手が出ない。

 同国政府が1980年代に開始した「すべての人に教育を」政策は、同国の識字率向上に大いに貢献したものの、このように人的・物的資源の不足、授業料などの高騰、教師の流出という三つどもえの要素で、早くも破綻の様相を見せている。

 写真は1月16日、ハトクリフ・タウンシップで、10歳の息子に勉強の手ほどきをしている母親。(c)AFP/DESMOND KWANDE