【9月9日 AFP】敗血症の原因となる細菌の臭いを検知できる「人工の鼻」を開発したとする研究が8日、米インディアナポリス(Indianapolis)で開かれた米国化学会(American Chemical Society)の会議で発表された。この技術は、多数の命を救い、医療費を削減する助けになるかもしれないという。

 この「鼻」を開発した台湾・国立高雄大学(National University of Kaohsiung)のジェームズ・キャリー(James Carey)氏らの科学者チームによると、患者の血液中に敗血症を引き起こす細菌が含まれているかどうかを24時間以内に明らかにすることが可能という。これにより、従来の方法よりも最大で2日早く検査結果を出せるという。

 キャリー氏は「現在の技術では、単に細菌が存在するかどうかを調べるためだけに、血液検体を容器内で24~48時間培養する必要がある」と語る。「また、患者を治療するための適切な抗生物質を選択するために、細菌の種類を特定するステップが必要で、さらに24時間以上の時間がかかる。これが終わるまでに、患者は臓器障害を起こしたり、敗血症で死亡したりするかもしれない」

   「人工鼻」には、細菌の培養を助ける液体栄養素で満たされた手のひらサイズのプラスチック製の瓶が装着されている。瓶の内側には、兆候を示す細菌が出す臭いに反応して色が変化する化学物質を点状に小さく配置してある。

 この新しい機器は、最も一般的に見られる8種類の病原菌を特定できると、キャリー氏は米国化学会が発表したプレスリリースの中で述べている。

 この機器は、数年前に米イリノイ大学(University of Illinois)で開発された試作品を基に製作されている。試作品は、細菌を培養するのに実験室の培養皿と固形栄養素を使用しており、時間がかかり感度も低かったとプレスリリースは述べている。

   「人工鼻」開発のその他の取り組みでは、患者の呼気に含まれる数種のがんの形跡や、ある種の爆発物の存在を検知できる試作品も作られている。

 今回の発表で引用された統計データによると、敗血症では、米国だけでも毎年25万人以上の患者が死亡しており、治療費も年間200億ドル(約2兆円)以上に及んでいるという。

 この機器は「世界中ほぼどこででも、非常に低コストかつ必要最低限の訓練で使用できる」とキャリー氏は述べている。(c)AFP