マウス実験でダウン症からの回復に成功、米研究
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【9月5日 AFP】生まれたばかりのマウスを用いた実験で、ダウン症候群(ダウン症)から回復させることに成功したとする論文が、4日の米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)」に掲載された。米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の研究チームが発表した論文は、マウス実験の成功をそのまま人間のダウン症の治療につなげてはいないが、将来的に画期的な治療をもたらす可能性があると研究者らは期待している。
21番染色体が通常よりも1本多く3本存在することにより、知的発達の遅れなど健康問題を生じるダウン症には現在、治療法がない。
研究チームは、人間のダウン症と同様の症状を起こすよう遺伝子操作を行った実験用マウスを作製し、マウスたちが誕生した日のうちに「ヘッジホッグシグナル伝達経路作動薬(アゴニスト)」として知られる低分子化合物を注射した。
この化合物は人間に使用した場合の安全性は証明されていないが、ソニック・ヘッジホッグ遺伝子(SHH)を通じ、脳と体の通常の発達を促す作用がある。SHHは発達に不可欠なタンパク質の1種、ソニック・ヘッジホッグを生成するよう指令する遺伝子だ。
論文の主著者、同大のロジャー・リーブス(Roger Reeves)氏によれば、化合物は非常によく作用したという。同氏は「多くの場合、ダウン症の人々の小脳の大きさは通常の約60%だ。しかし、この1回の注射により、(マウス実験では)成人期を通じて小脳の成長を完全に正常化することができた」と述べている。
しかし脳の成長に変化を与えると、がんの発症など意図しない結果を引き起こす可能性があることから、この注射を人間の治療法に適用するのはまだ困難だという。リーブス氏は「ダウン症は非常に複雑で、認知力を正常化させる特効薬があるとは誰も考えていない。複合的なアプローチが必要だろう」と述べている。(c)AFP