【8月5日 AFP】脚部の血管が危険なほど狭くなり、血流が詰まる病気の「末梢動脈疾患」の患者数が、10年間で25%近く増加したという調査論文が1日、英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」に発表された。

 論文によると、末梢動脈疾患の患者数は、発展途上国の中年層での急増を受けて、10年前は1億6400万人だったのが、2010年には約2億200万人にまで増加したという。

 増加の要因としては、平均余命の延長が挙げられている。これは、末梢動脈疾患が主に高齢者で発症する病気であるためだ。また、身体を動かすことが少ない生活スタイルも要因の1つに挙げられている。

 末梢動脈疾患は、心臓発作や脳卒中のリスクが3倍近くになるなどの多くの問題に関連している。喫煙、糖尿病、高血圧、高コレステロールなどとも関連がある。

 今回の試算は、これまでに発表された論文34件をとりまとめた結果に基づいている。

 低所得国と中所得国における末梢動脈疾患の患者数は現在、25%以上増加して、1億4000万人以上に達していることが今回の調査で明らかになった。このうち、5500万人近くが東南アジア、4600万人が中国や日本を含む西太平洋地域の人々だという。

 今回の調査を率いた英エディンバラ大学(University of Edinburgh)のジェリー・フォークス(Gerry Fowkes)名誉教授(疫学)は、末梢動脈疾患は「21世紀における世界規模の問題になっており、高所得国の人々がかかる病気とみなすことはもはやできない」と述べている。「運動機能の喪失、生活の質(クオリティ・オブ・ライフ、QOL)の低下、心臓発作や脳卒中のリスクの著しい増加などにより、この劇的な増加は、すでに公衆衛生の重大な課題になっている」

 フォークス教授は、世界人口が高齢化するにつれて末梢動脈疾患のまん延が避けられない状況を考慮し、末梢動脈疾患を予防・治療するための方針を整備するよう各国の保健機関に呼びかけた。(c)AFP