【7月10日 AFP】中国政府が運営する中国赤十字会(Red Cross Society of China)が、臓器提供をあっせんした病院に金銭を支払うよう求めていたことが9日、現地メディアの報道で明らかになった。

 中国赤十字会の職員が大衆紙・新京報(Beijing News)に明かしたところによると、金額は地域によって異なり、その大半はドナー(臓器提供者)の医療費に充てられるとされる。また、同紙が伝えた南部広州(Guangzhou)の病院職員の話によると、臓器提供に対する寄付金の平均額は10万元(約165万円)で、「寄付金が具体的にどのように使われるのかは、一般の人々には分からない」という。

 また東部・江蘇(Jiangsu)省にある別の病院職員によると、この病院ではドナーの家族に宛て、5万元(約82万円)を赤十字に渡したという。

■高い需要と不足する臓器

 世界各地で行われている臓器移植プログラムにおいて、倫理上の配慮は重要視されており、中国の法律でも、臓器の売買または臓器提供の見返りとして金銭的対価を受け取ることは禁じられている。

 多くの人口を抱え、高齢化が進む中国では、提供される臓器の需要は高い。だが、輪廻転生を信じて死後も完全な体を保存する必要があると考える国民が多いため、提供される臓器が少ないのも現状だ。

 9日の環球時報(Global Times)が伝えた中国国家衛生計画出産委員会(National Health and Family Planning Commission)の統計によると、臓器移植を希望する患者のうち、実際に提供を受けることができるのは、年間でわずか30人に1人。提供される数が絶対的に不足しているため、臓器提供の強制や違法な売買も起きている。その一方で、中国政府は、以前から止めるとしている死刑囚からの臓器収集をいまだに続けている。

 中国では2010年、臓器移植をより公正で透明なものにすることを目的として新たな制度が設けられた。しかし国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)が先月伝えたところによると、導入から1年後の時点で、この制度が適用されたのは全移植手術のうちの約3分の1にとどまった。

 今回の報道について、AFPは中国赤十字会にコメントを求めたが、返答はまだない。(c)AFP