【7月4日 AFP】すべての体細胞への分化が可能な人工多能性幹細胞(iPS細胞)から初めて人間の成人の肝臓に似た組織を作製し、研究用マウスに移植したと、横浜市立大大学院医学研究科(Yokohama City University Graduate School of Medicine)のチームが3日付の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。提供される臓器の深刻な不足を解消する可能性に期待がかかる。

 同大チームは最初にiPS細胞を異なる種類の細胞と一緒に培養し、肝臓の初期段階である5ミリ大の「肝芽」を作製。これをマウスに移植したところ、血管がつながり「機能的なヒト肝臓」に成長したという。

 グループは報告で「世界で初めてヒトiPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器を創り出すことに成功した」と述べている。「たんぱく質の合成や薬物の代謝などヒトの肝臓に特徴的な機能」を持っており、肝不全になった人の生存率改善に貢献できるとしている。

 同グループの武部貴則(Takanori Takebe)助手は、すい臓や腎臓、肺といった他の臓器にも同様の手法は有効だろうとしながらも、ヒトで試験を行うまでには10年ほどかかるだろうと述べている。(c)AFP