【6月25日 AFP】乳児期に母乳で育った人は、粉ミルクで育った人に比べて出世する確率が24%高く、社会的地位が下がる確率が20%減少する。このような研究報告が25日、医学誌「小児期疾患アーカイブス(Archives of Disease in Childhood)」に発表された。報告を行った英国の研究チームは、「我々の研究により、母乳には一生を通じて人に社会的利益をもたらす可能性があることが示され、母乳を与えることの健康上の利点をさらに裏付けた」としている。

 この研究は、母乳と社会移動の相関関係に関する調査の中で、最大規模だという。

 研究チームは、英国で1958年に生まれた1万7419人と1970年に生まれた1万6771人のデータから、10~11歳時と33~34歳時の社会的地位を4段階で比較し、乳児期に母乳で育ったかどうかを調べた。数年ごとにデータを収集して追跡調査を行い、脳の発達やストレスの度合いなど、影響が出るとみられるその他の要素についても考慮した。

 その結果、1958年生まれのグループでは68%が母乳で育ったのに対し、1970年生まれのグループではわずか36%だった。また、「母乳が与えた影響の約3分の1(36%)は、知性とストレスに関するものだった。母乳は脳の発達を助けて知性を高め、結果として社会的地位を向上させる。また、母乳で育った子供は、ストレスによる症状がより少ないことも明らかになった」という。

 著者らは、母乳には、脳の発達に欠かせない長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)が含まれていると話す。しかし、これまでの研究では、LCPUFAだけでは認知発達を促すことは不可能だろうと指摘されてきた。

 今回の研究チームによると、子供の成長にとってより効果的なのが、母乳に含まれる栄養素なのか、それとも母親と乳児が授乳を通して肌を密着させることなのか、あるいはその両方なのか、結論には至らなかったという。

 粉ミルクを与えている母親であっても、母乳を与える母親とその子供の間でもたれるスキンシップを真似することで、子供の長期的な発育を支えることができるかどうかについては、さらなる研究が必要だと研究者らは述べている。(c)AFP