【6月5日 AFP】国連食糧農業機関(Food and Agriculture OrganizationFAO)は4日、肥満と栄養不足は世界経済の大きな負担になっているとの見解を示すとともに、各国政府に対し、食の健康への投資は、社会はもちろん経済にも大きな利益をもたらすと訴えた。

 伊ローマ(Rome)に本部を置くFAOの年次報告書によると、肥満に関連した生産性低下と医療費の増加は、世界経済に年間約1兆4000億ドル(約140兆円)の損失をもたらしている。

 世界人口の12.5%にあたる8億6800万人が現在も栄養不足の状態にあり、子供の26%が栄養失調による発育不良に苦しんでいる。一方で約14億人が過体重で、その約3割が肥満だという。FAOでは、栄養状態を改善すれば、収入の増加につながると指摘している。

 全世界で飢餓の割合は減少しているが、多くの国で栄養の改善が依然、優先度の低い課題として扱われている点をFAOは特に問題としている。FAO高官の1人は「カロリーが足りないという意味での飢餓を根絶することは可能かもしれないが、栄養面を改善することの方がより困難だ」と述べた。

 進む都市化や体を動かすことの少ないライフスタイル、加工食品を利用しやすくなっていることなどにより、栄養改善や肥満抑制について政策立案者たちは大きな課題に直面しているが、FAOでは対策に投資する「見返りは大きい」としている。

 またFAOでは、青果や豆類、動物性食品など高栄養の食品を中心とする研究開発の重視など、栄養に重点を置く農業政策による栄養改善も呼び掛けている。さらに子供や高齢者など栄養リスクの高い層への食事支援や消費者に栄養情報を伝える食品表示の改善、栄養教育による国民の行動変化の促進なども呼び掛けている。(c)AFP