【6月3日 AFP】ロシアでは1日から、公共の場所での喫煙を段階的に禁止する新法が施行された。しかし喫煙者たちは不公平な法律だと訴えるとともに、当局の法執行能力を疑問視し、禁煙とされた場所で堂々とタバコを吸い続けている。

 ロシア政府の試算によると同国の日常的な喫煙者は4400万人。政府は国内喫煙者の半減を目標に、新たな公衆衛生法の段階的導入を決めた。

 1日に施行されたのは第1段階で、バスや路面電車、エレベーター、鉄道・地下鉄の駅構内、バス停、空港、政府庁舎、教育機関、医療施設などが禁煙となった。2014年6月1日からは、船舶や長距離列車内、駅ホーム、ホテル、カフェやレストランも禁煙となるほか、タバコ広告や販売量も大幅に制限される。

■取り締まり恐れぬ市民たち、背景に警察の腐敗

 だが、モスクワでは1日、地下鉄駅の出口や大学敷地内でこれまでと変わらずタバコに火を付ける人々の姿が見られた。「喫煙者に不公平だ。喫煙は個人の選択なのに」とこぼしたユリアさん(29)も、その1人。「公共の場所での飲酒を禁止した法律と同じで、どうせ機能しないわよ」と述べ、警察の腐敗を理由に挙げて、禁煙違反の厳格な取り締まりは行われないだろうとの見方を示した。

 モスクワ中心部の地下鉄駅のすぐ外でタバコに火を付けたタメルランさん(20)も「何があろうと、みんなタバコを吸い続けると思う。当局が本気で取り締まるのなら誰も吸わないだろうけれど、今のところ1人も逮捕されていないしね」と語った。

 喫煙の権利を訴える全国規模の運動も立ち上げられた。「全ロシア喫煙者権利運動(All-Russia Movement For The Rights of Smokers)」はウェブサイトで「政府の政策は時として、喫煙との戦いを喫煙者との戦いに変えてしまう」と主張している。

 ドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)首相は昨年、喫煙に関連した疾患で毎年推計40万人が死亡しており、中でも習慣的に喫煙する若者が増えているとして、懸念を表明していた。

 独立系調査機関レバダ・センター(Levada Center)が昨年実施した調査では、国民の81%が公共の場所での禁煙を支持している。(c)AFP/Maria ANTONOVA, Eleonore DERMY