【4月18日 AFP】患者が合併症を起こさずに退院するよりも、手術に失敗したほうが病院は大幅に儲かるため、米国の病院は治療の改善意欲に欠けているとする研究報告が16日、米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)に発表された。

 米国の手術代は毎年推計4000億ドル(約39兆円)。うち民間保険で手術を受ける患者では、手術が成功した場合よりも合併症を起こした場合のほうが病院側の利益率は330%増となっていた。またメディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)がカバーする患者の場合も、合併症を起こしたほうが病院側の利益率は190%増となっていた。

 金額にすると、民間保険の場合の利益幅は手術成功で1万6936ドル(約166万円)、失敗で5万5953ドル(約550万円)で差額は3万9017ドル(約384万円)。メディケアの場合は手術成功で1880ドル(約18万5000円)、失敗で3687ドル(約36万円)で差額は1749ドル(約17万円)だった。

 論文を執筆した米ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public HealthHSPH)のアトゥール・ガワンデ(Atul Gawande)教授によれば「病院がクオリティにふさわしい報酬を受けているわけではないことは周知の事実だが、実害が起きたときに病院がどれだけ儲けているのかについてはこれまで正確に認識されていなかった」という。また同教授は合併症を抑制するために効果的な方法は研究によって明らかになっているにもかかわらず、病院がそれを改善しようという動きが鈍いと指摘し「医療費の支払制度に改革が必要なことは明確だ」と述べた。

 一方、自己負担やメディケイド(低所得者医療扶助制度)で手術を行った患者が合併症を起こした場合には、病院の利益幅は大幅に少なかった。これは保険未加入者やメディケイド対象者の治療を中心としているいわゆる「セーフティーネット病院」にとっては、合併症の抑制が財務実績を向上させることにつながることを意味する。

 調査は米南部で12の病院を運営する非営利医療機関から2010年に退院した手術後患者3万4256人のデータを分析した。手術計1820件について少なくとも一つの合併症が認められた。(c)AFP