【4月18日 AFP】中国の路上で10羽のスズメが死んでいる写真がインターネットのソーシャルメディアで広まり、当局の迅速な対応が引き出されたことは、鳥インフルエンザの感染拡大を隠蔽することがインターネットの時代にはいかに困難であるかを示す出来事だった。

 中国は、2003年にSARSSevere Acute Respiratory Syndrome、重症急性呼吸器症候群)の感染拡大を隠蔽しようとして国際社会から非難を浴びた際とは対照的に、今回の鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)に関する情報の透明性については称賛を受けている。

 だが専門家らは、この10年でのテクノロジーの変化と、ツイッターに似たマイクロブログ「新浪微博(Sina Weibo)」の浸透が、当局を開放的な流れに追い立てる後押しとなっており、中国政府には選択の余地がないと指摘する。

■1枚の写真がネットで広まる

 鳥インフルエンザのヒト感染が確認されたため生きた家禽類の取引を禁止し、殺処分を行った南京(Nanjing)市に暮らす女性、マオ・シャオジオンさんが自宅そばのモクレンの下で撮影した画像は、その好例となった。

 今月初め、マオさんは当局に調査を求めるコメントと一緒に、この画像を新浪微博に投稿した。するとこの投稿は2万回ほど再送され、数十万人に閲覧されてポータルサイトの「新浪(Sina)」で最も話題のトピックになった。

 警察当局は同日夜、すぐにスズメの死骸を回収し、H7N9型ウイルスの検査を実施。2日以内に、スズメの死因がウイルスとは無関係だったことを公式発表した。

■政府への監視、マイクロブログが後押し

 中国当局はインターネットを厳格に統制するため、政治的にきわどいと自らが判断するコンテンツを検閲するだけではなく、市民が当局の監視の目を逃れるために使っている隠語にも目を光らせている。

 今回の鳥インフルエンザ問題では、さらに旧来型の統制手段も用い、感染拡大についてうその情報をネットで拡散し世論の不安を煽ったとして、少なくとも10人を拘束している。

 だが、今回の感染拡大にあたっての検閲は、過去の政治スキャンダルや公衆衛生スキャンダルの際と比べて限定的に見える。いずれにせよ、当局の意図がいかなるものでも、マイクロブログへの投稿件数とその速度により、当局が情報を統制することははるかに困難になった。

   「新浪微博は(政府に対する)監視を大いに強めた」と、中国のジャーナリズムを研究する香港大学(University of Hong Kong)中国メディアプロジェクト(China Media Project)のデビッド・バンダースキー(David Bandurski)氏は語る。

■対応に国外から評価の声、しかし国内の批判は封殺か

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は、中国の鳥インフルエンザ情報の提供に満足を示している。また米国の公衆衛生専門家らも、ワクチン開発とウイルス研究に必要な遺伝子配列を中国が迅速に公開したと評価している。

 WHO北京事務所のマイケル・オリアリー(Michael O'Leary)代表は前週、「共有されている情報のレベルに非常に満足しており、状況に関する更新情報はすべて提供されてきたと思う」と語った。

 だが、中国のネットユーザーは、鳥インフルエンザ感染による最初の死者が報告されてから3月31日の公式発表まで、3週間もの時間が空いたことを疑問視している。

 当局は、ウイルスが初めて人に感染したことを確認するために時間がかかったと述べているが、あるネットユーザーはSARSのときとの類似性を指摘し、次のように投稿した。「10年前も遅かった対応、10年後も遅い対応…変わったのはウイルスだけ」

 中国国外を拠点に中国当局の検閲を監視するニュースサイト「チャイナ・デジタル・タイムズ(China Digital Times)」によると、この投稿の検索はすでに遮断されている。(c)AFP/Bill Savadove