【4月11日 AFP】人がどの程度の痛みを感じているのかを脳スキャンで測定することに成功したとする論文が、10日の米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に発表された。痛みの度合いを検査で正確に計測することが将来、可能になるかもしれない。

 論文の主著者、米コロラド大学ボルダー校(University of Colorado at Boulder)のトール・ウェイジャー(Tor Wager)准教授は「現在、痛みやその他の感情を測る上で臨床的に許容できる方法は、本人にどう感じるか聞くしかない」と指摘する。
 
 研究チームは被験者114人を対象に、左前腕に「温かい」から「熱い」までの熱を加え、磁気共鳴画像装置(MRI)による脳スキャンを行った。

 痛みの感じ方には個人差があるため、スキャン画像にはそれぞれ個別の痛みのシグナルが示され、鈍感な人もいれば敏感な人もいるだろうと研究チームでは予想していた。ところが驚いたことに、シグナルは共通しており、90~100%の確度で個人の痛みの度合いを予測することができたという。

■失恋の痛みは肉体的痛みとは異なる

 一方、従来の研究では、失恋した人の脳は肉体的な痛みを受けた人の脳と似た活動をすると考えられていた。だが今回の研究で、最近失恋したばかりでまだ傷心状態にある被験者グループに失恋相手の写真を見せたところ、熱を加えられたときに脳が発するシグナルは観察されなかった。

 また、実験前に痛み止めを処方されていた場合、脳のシグナルが弱まることも分かったという。

 今回の技術はまだ広く普及はしていないが、研究チームは今後数年以内に最初の客観検査の開発を行い、慢性的な痛みの緩和につなげたいとしている。(c)AFP