【4月10日 AFP】広く使用されている化学物質「ビスフェノールA(bisphenol ABPA)」の影響で出生後に胎児が乳がんを発症する危険が高くなるとの規制機関の発表を受け、フランス政府は9日、BPAを含む紙製品を欧州全体で規制の対象とするよう呼び掛けると表明した。

 BPAは、ペットボトルや缶詰の内面被膜などに広く使用されている物質だが、脳神経系の問題や生殖障害、肥満などとの関連が一部の研究で指摘されている。BPAの哺乳瓶での使用は、欧州連合(EU)、米国、カナダで禁止されている。

 フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は、妊娠中には、内側をコーティングした缶に保存された食品を食べたり、多くのオフィスビルに設置されているポリカーボネイト製の給水器から水を飲んだりしないように警告している。ANSESによると、これらは「BPAの暴露源」だからだという。

 またANSESは、妊娠中は店のレジで渡されるレシートに素手で触れないようにとも助言しており、レジ係のBPA暴露の危険性についてはさらなる調査・研究が必要としている。

■妊婦のBPA摂取・接触で胎児に健康リスクの可能性

 ANSESによると、一部のレジのレシートやATMの明細書などに使用されている感熱紙といった、BPAを含む製品を母親が胃で摂取したり、肺で吸入したり、皮膚で何度も触れたりした場合、BPAの影響で胎児に健康上のリスクが生じる危険性があるという。

 BPAはCDやDVDの他、電子レンジでの調理や冷蔵庫での保存に使用するプラスチック容器などにも広く使われている。

 フランスのデルフィーヌ・バト(Delphine Batho)エコロジー・持続的開発・エネルギー相によると、フランス政府はこのANSESによる報告に基づき、感熱紙レシートでのBPAの使用を禁止するよう欧州委員会に提言するという。

 ANSESは、2012年7月までに発表されたBPAのリスクに関する世界の学術研究をまとめた報告書の中で、子宮内の胎児に対するリスクを指摘する証拠について、専門家が「中程度の」確信を得ているものの、胎児以外の人に対する危険性についてはまだ明らかになっていないと述べている。

 ANSESは、3年に及ぶ調査をまとめた報告書の中で「妊婦が一定以上BPAに暴露された場合、胎児の乳腺にリスクが及ぶことが調査結果によって明らかになった」と述べている。

 報告書はこのリスクについて、「特徴として挙げられるのは、乳腺における腫瘍形成への感度の増大とみられ、男性、女性の両方に影響する可能性がある」と説明している。(c)AFP