「治療不可能な結核」の脅威が現実に、早期対策を呼びかけ 研究
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【3月25日 AFP】既存の薬剤への耐性を持つ結核 (TB) を発症する患者がますます増加するなかで、研究者らは世界結核デー(World TB Day)の24日、治療不可能な結核の出現という「非常に現実的」な危険を回避するには、断固とした指導力とさらなる研究投資が必要と世界に呼びかけた。
研究者らは24日の英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」に掲載された一連の論文で、増加の一途をたどる薬剤耐性結核患者に医療の対応が追いつかなくなる恐れがあると警告している。
すでに、東欧と中央アジアで新たに結核と診断された患者の3割以上が多剤耐性結核(MDR-TB)を発症している。MDR-TBは、最も有効な抗結核薬のイソニアジド(isoniazid)とリファンピン(rifampin)に耐薬性を持つ。2011年の結核症例約1200万件のうち、約63万件がMDR-TB症例だったと見られている。現在までに84か国で症例が報告されている超多剤耐性結核(XDR-TB)は、耐薬性の範囲がさらに広い。
肺に空気感染する結核は通常、抗生物質の6か月間投与で治療可能だが、患者が所定量の薬剤の服用を途中で止めてしまったか、もしくは薬自体の効果がなかったなどの理由で、結核を発症する細菌を治療で殺傷できなかった場合に、結核治療薬剤への耐性が生じることになる。
ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ医学部(University College London Medical School)感染症国際保健センター(Centre for Infectious Diseases and International Health)責任者のアリムディン・ツムラ(Alimuddin Zumla)氏率いる研究チームの論文によると、「XDR-TBが広範囲でまん延すると、ほぼ治療不可能な結核菌が出現する恐れがある」という。「国際間の人の移動が簡単になり、MDR-TBの発症率が増加している今の状況では、治療不可能な結核が広くまん延する脅威は極めて現実的だ」
研究者らは、医療側の立場として「政治的・科学的思考の改革」が必要と強く訴える。「世界的な経済危機で医療サービスへの投資が削減されると、国による結核予防計画が脅かされ、世界規模の結核予防で達成されてきた進歩が台無しになる恐れがある」
「医療で手の施しようがなくなる前に、世界は薬物耐性結核の深刻な脅威を認める必要」があり、当面は、新薬と高性能で早い診断ツールの開発が急務だという。(c)AFP